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現場が変わらなければ、何も変わらない

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診療報酬の抑制、人件費の高騰、そして人口減少──。いま、医療・介護業界は「拡大の時代」から「持続可能性の時代」へと、大きく舵を切りつつあります。
本コーナーでは、診療報酬制度に精通したM&Cパートナーコンサルティング代表・村上佳子氏と、医療機関・介護施設のクライアントを多数抱える税理士法人佐々木総研代表・佐々木大氏が、現場で起きているリアルな課題、そして今後の事務長・経営者に求められる視点について、不定期で語り合います。

 医療機関の財務悪化が“当たり前”になりつつある現実

佐々木:
最近、クライアント先の病院やクリニックから「赤字が続いていて…」「もう債務超過に近くて」といった声を聞くことが増えてきました。以前と比べて増えている印象、ありませんか?
村上:
ありますね。10年、20年前に比べて、明らかに財務状況が悪化している医療機関が増えています。しかもそれが“珍しいことではなくなってきている”のが問題なんです。
その一方で人件費は上がっていく。診療報酬がこの先大幅に上がる見込みもない。経営的に言えば、どう考えても悪化の一途じゃないですか。
佐々木:
人件費を抑えれば人は辞めていくし、かといって増やす余力もない。公認会計士も税理士も、正直“これが正解です”とは言えない。それだけ難しい状況です。

「成長」ではなく「持続可能性」を目指す時代へ

佐々木:
結局、医療機関だけの話じゃないですよね。社会全体が、もう“拡大していくフェーズ”じゃない。
村上:
そう思います。これまで日本は「経済成長=正義」だった。でも人口は減り続けてるし、社会の規模もゆるやかに小さくなっている。これからは“どう維持していくか”のフェーズです。経営においても、成長より“サステナビリティ”が大事になる。
佐々木:
永続的に続けられる仕組みにしていかないと、もう成り立たない。これまでのように「拡大か、撤退か」の二択ではなく、小規模でも中規模でも、“地域で役に立ち続けられる”ことに焦点を当てた運営が求められていると思います。
ただ、他業種と比べれば、医業経営はまだ“まし”だなと感じることもあります。ある程度、先の見通しが立てやすい要素があるからです。
村上:
一般の業界がこれほどのスピードで変化を続けている中で、医療業界だけが変わらなくていいということはないはずです。しかし、昔のやり方に固執する先生方もいらっしゃいます。時代は確実に変わっています。

「完璧な戦略」より「今、やれることを」

佐々木:
「じゃあどうしたらいいんだ」ってなると…なかなか答えが見つからない。コンサルでも難しくないですか?
村上:
難しいですよ(笑)。でもね、唯一言えるのは、「今、目の前で起きている課題から逃げないこと」。改善できることを着実にやっていくことです。
佐々木:
そういう意味では、“取れる点数はしっかり取る”“効率の悪いオペレーションは見直す”など、地味な改善こそが最も確かな戦略なのかもしれません。
村上:
本当に。今できることを積み重ねていくしかない。それが結局、一番現実的で、効果のある経営戦略なんです。