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「心理的安全性を土台にした人材育成と定着の仕組みについて」

「スタッフが定着しない」「指示待ちばかりで主体性が育たない」介護・福祉現場の管理者から聞かれるこうした悩みの根底には、多くの場合、職場における「心理的安全性」の低さがあります。心理的安全性とは、誰に対しても気兼ねなく率直な意見や質問ができる状態を指します。これが低い職場ではミスが隠蔽され、重大な事故につながるリスクが高まります。逆に心理的安全性が確保された職場では、チームの学習が進み、エンゲージメントが上がり、離職率が下がることが研究によって示されています。

心理的安全性を構成する要素として、「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」の4つが挙げられます。ケアの方針に疑問を感じた際にすぐ確認できる環境は事故防止に直結し、困ったときに助けを求められる関係性はバーンアウトを防ぎます。新しいアイデアや異なる視点が歓迎される職場では、利用者一人ひとりに寄り添った柔軟なケアが生まれます。これらはいずれも、管理者が意図的に仕組みとして整えなければ自然には育ちません。

具体的な実践として有効なのが、上司が聞き役に徹する1on1面談の定期的な実施です。「ここでは本音を話してもいいんだ」という実感が積み重なることで、スタッフの主体性が育まれます。あわせて経営理念を現場の行動レベルに落とし込む工夫も重要です。「なんのために働いているのか」が曖昧なままでは、仕事は単なる作業になりやりがいが失われます。年1回の全社員が集まる場での理念共有や、1on1面談での承認と対話の繰り返しが、理念を職員一人ひとりの「自分ごと」にしていきます。

人材が定着する組織には「会社が好き」「仕事が好き」「仲間が好き」「待遇が好き」の4つの要素がバランスよく整っています。介護現場では「仕事は好きだが待遇や人間関係が」というケースが多く、この構造的な課題を仕組みで解決することが管理者の役割です。育成とはスキルを教えることではなく、スタッフ一人ひとりが自分らしく活躍し幸せを感じられる土台をつくることです。まずは今日からスタッフへの「承認」と「傾聴」を意識することが、強い組織づくりの第一歩となります。

 

原田 和将

一般社団法人 アジア地域社会研究所 所属
介護現場での管理者としての経験を活かした職員研修、コーチングを中心に活動。コーチングはITベンチャーなど多岐にわたる業態で展開。国立大学での「AIを活用した介護職員の行動分析」の実験管理も行っており、様々な情報を元にした多角的な支援を行う。