皆さん、こんにちは。M&Cパートナーコンサルティングのパートナーコンサルタント、長幸美です。
今回から6回にわたって、医療機関における「身だしなみ」についてお話しします。
身だしなみというと、制服や髪型、メイクなどを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。もちろん、それらも大切です。しかし、最初に皆さんと共有しておきたいのは、身だしなみは単に見た目をきれいにすることではない、ということです。
私が研修などで必ずお伝えしているのが、
「おしゃれと身だしなみは違います」
ということです。
おしゃれは、自分の好みや個性を表現するものです。自分の好きな服を着たり、アクセサリーを選んだりすることは、私生活ではとても楽しいことですよね。
一方、身だしなみは、相手に不快感を与えず、安心して接していただくために自分を整えることです。
つまり、おしゃれの基準は「自分がどうしたいか」ですが、身だしなみの基準は「相手がどう感じるか」なのです。
患者さんは「見える情報」から判断しています
患者さんは、医療機関を訪れた時点では、医師や看護師の技術、職員の知識、院内の安全管理体制を詳しく知ることはできません。
そのため、患者さんはまず、目の前にある情報から医療機関を判断します。
受付職員の表情、制服の着こなし、髪型、姿勢、話し方、院内の整理整頓。こうした一つひとつの様子を見て、
「ここなら安心して相談できそう」
「きちんと診てもらえそう」
と感じるのです。
反対に、制服がシワだらけだったり、髪が乱れていたり、職員がうつむいたまま対応していたりすると、患者さんは小さな不安を感じます。
その職員本人はきちんと仕事をしていたとしても、患者さんには、その仕事の中身までは見えません。最初に伝わるのは、目に見える姿や振る舞いです。
「清潔」と「清潔感」は同じではありません
身だしなみを考える際には、「清潔」と「清潔感」の違いも大切です。
たとえば、制服を毎日洗濯しているのであれば、衛生上は清潔かもしれません。しかし、大きなシワが残っていたり、襟元がよれていたりすれば、患者さんには清潔に見えないことがあります。
自分では「洗濯しているから問題ない」と思っていても、患者さんから見た印象は異なる可能性があるのです。
同じように、髪を毎日洗っていても、前髪が目を覆い、対応のたびに手でかき上げていると、落ち着きがなく、不衛生な印象を与えることがあります。
身だしなみでは、実際に清潔であることに加えて、「相手から清潔に見えること」も必要です。
身だしなみは患者さんへの準備です
患者さんの多くは、体調や治療、検査結果などに不安を抱えて医療機関を訪れます。いつもより緊張していたり、周囲の様子に敏感になっていたりする方もいらっしゃいます。
だからこそ、医療機関の職員には、患者さんの不安を少しでも和らげる姿勢が求められます。
身だしなみを整えることは、自分を飾ることではありません。
「今日も患者さんを安心してお迎えできる状態にしておこう」
という、仕事を始める前の準備なのです。
制服を整えることも、髪をまとめることも、鏡を見て表情を確認することも、すべて患者さんへの思いやりにつながっています。
迷ったら「患者さんがどう感じるか」で考える
職場では、ネイルやアクセサリー、髪の色などについて、「どこまでならよいのか」と迷うことがあります。
このようなとき、個人の好みだけで議論すると、なかなか答えが出ません。
「私は気にならない」
「この程度なら普通です」
という基準は、人によって違うからです。
迷ったときは、
「体調が悪く、不安を抱えて来院した患者さんが見たときに、安心できるだろうか」
と考えてみてください。
医療機関には、年齢、価値観、生活背景の異なるさまざまな患者さんが来院します。できるだけ多くの患者さんに安心していただけるよう、仕事中は少し控えめに整えることが基本になります。
もちろん、職員の個性や多様性を否定することが目的ではありません。感染対策や医療安全、業務上の必要性、患者さんへの配慮を踏まえ、納得できる基準を職場で共有することが大切です。
長さんのワンポイントアドバイス
身だしなみで迷ったときには、自分にこう問いかけてみてください。
「これは、患者さんに安心していただけるだろうか」
この問いを判断基準にすると、何を整えるべきかが分かりやすくなります。
身だしなみは、自分をよく見せるためのものではありません。患者さんに安心して医療を受けていただくための、医療人としての準備なのです。
今日からできるチェック
□ 身だしなみを患者さんの立場から確認している
□ 制服の汚れだけでなく、シワやよれも確認している
□ 髪型や表情が相手に与える印象を意識している
□ 「自分がよいと思うか」だけで判断していない
□ 出勤時に患者さんを迎えられる状態か確認している
次回は、清潔感だけでなく、表情や姿勢が患者さんの安心感にどのような影響を与えるのかについてお話しします。

