こんにちは。
M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。
今回は、疑義解釈その10の中から、掲示事項についてお話しします。
今回の疑義解釈で、多くの医療機関に関係するのがこの論点です。
保険医療機関内に掲示することとされている事項について、デジタルサイネージ等による電子的表示を行ってよいのか、というものです。
結論からいうと、差し支えない、とされています。
つまり、健康保険法に基づく保険医療機関及び保険医療養担当規則等の規則、告示、通知により、保険医療機関内に掲示することとされている事項について、電子的表示、たとえばデジタルサイネージ等による掲示は認められます。
これは、医療機関にとって大きいですね。
院内掲示は、改定のたびに増えます。
施設基準、明細書発行、後発医薬品、選定療養、医療情報取得、医療DX、感染対策、個人情報、各種加算に関する掲示。
待合室や受付周辺が、掲示物でいっぱいになっている医療機関も多いと思います。
そこにデジタルサイネージを活用できるとなると、見た目も整理できますし、改定時の差し替えもしやすくなります。
ただし、ここで注意が必要です。
今回の疑義解釈は、「デジタルサイネージでよい」とは言っていますが、「何でも画面に流しておけばよい」と言っているわけではありません。
電子的表示による掲示を行う場合には、利用者が容易に視認し、その内容を適切に確認できるようにする必要があります。
また、表示内容を一定時間ごとに切り替えて表示する場合でも、数分以内に一巡して表示されるなど、利用者が内容をすべて確認できる状態を確保することが求められています。
ここは、実務上とても大切です。
たとえば、掲示事項が多すぎて、1周するのに30分かかるようなサイネージでは、患者さんが必要な情報を確認できるとは言いにくいと思います。
また、文字が小さすぎる、表示時間が短すぎる、受付から見えにくい場所にある、という場合も注意が必要です。
さらに重要なのは、紙媒体の備付けです。
疑義解釈その10では、利用者から求めがあった場合に速やかに閲覧できるよう、掲示内容を記載した紙媒体を保険医療機関等内に備え付けること、そして、その掲示内容を紙媒体で閲覧できる旨を表示することとされています。
つまり、デジタルサイネージを導入したからといって、紙を完全になくしてよいわけではありません。
ここを誤解しないようにしてください。
実務上は、次のような運用がよいと思います。
待合室や受付付近には、デジタルサイネージで主要な掲示事項を表示する。
表示は数分以内に一巡するように設定する。
文字サイズや表示時間を、患者さんが読めるレベルにする。
紙媒体の掲示ファイルを受付などに備え付ける。
「掲示内容は紙媒体でも閲覧できます。ご希望の方は受付にお申し出ください」といった案内を表示する。
この形であれば、電子掲示の利便性と、紙媒体による閲覧可能性の両方を満たしやすくなります。
もう1つ注意したいのは、健康保険法以外の法令に基づく掲示です。
疑義解釈その10では、医療法等、健康保険法以外の法令に基づき掲示が求められている事項については、それぞれの法令の規定に従うこととされています。
つまり、保険診療上の掲示についてデジタルサイネージが認められたからといって、すべての院内掲示を同じ考え方で処理してよいわけではありません。
医療法、個人情報保護、労務、安全管理など、別の根拠で掲示しているものは、それぞれ確認が必要です。
今回の掲示事項の疑義解釈は、医療機関にとって、院内掲示を整理するよいきっかけになります。
掲示物が古いままになっていないか。
改定後の内容に更新されているか。
デジタル表示にした場合、患者さんが読める形になっているか。
紙媒体の備付けはあるか。
紙で閲覧できる旨の案内はあるか。
このあたりを、ぜひ一度確認してみてください。
令和8年度診療報酬改定は、点数や算定要件だけでなく、こうした院内表示、文書保存、届出管理といった実務の整備まで含めて対応する必要があります。
疑義解釈その10で示された内容は、決して大きな疑問についての回答ではありません。
しかし、医療機関の現場にとっては、「レセプト」「診療録」「施設基準」「掲示」をもう一度点検するよい材料です。
医事課だけで抱え込まず、受付、診療部門、看護部、在宅部門、放射線治療部門、精神科部門など、関係する部署と一緒に確認していきましょう。

