こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。
最終回は、退院時薬剤情報管理指導料を院内でどう標準化するかについてお話しします。
ここまで、退院時薬剤情報管理指導料の基本要件、退院時薬剤情報連携加算の削除、薬剤総合評価調整加算との関係、病棟薬剤業務実施加算1の実績管理について見てきました。
最後に大切なのは、これを現場の仕組みに落とし込むことです。
退院時薬剤情報管理指導料は、薬剤師個人の努力だけに頼っていると、どうしても算定が不安定になります。
担当薬剤師がいる日はできる。
忙しい日は漏れる。
急な退院では対応できない。
休日退院では記録が残らない。
医事課が算定できるか判断できない。
このような状態では、安定した運用にはなりません。
ですので、院内で標準フローを作ることが必要です。
まず、入院時です。
入院時には、持参薬、お薬手帳、薬剤情報提供書、患者さんやご家族からの聞き取りを通じて、服薬状況を確認します。
ここで重要なのは、誰が確認し、どこに記録するかを決めておくことです。
薬剤師が確認するのか。
看護師が一次確認し、薬剤師が必要に応じて確認するのか。
病棟によって流れが違うのか。
記録場所は電子カルテなのか、薬剤管理システムなのか。
これが曖昧だと、退院時に必要な情報が見つからなくなります。
次に、入院中です。
入院中に薬が変更された場合、その理由を記録しておく必要があります。
単に処方が変わったという事実だけではなく、
「なぜ変更したのか」
「どの薬を中止したのか」
「退院後に再開してよいのか、しない方がよいのか」
が分かるようにしておくことが大切です。
これは、退院後の薬局やかかりつけ医にとって非常に重要な情報です。
次に、退院予定の把握です。
ここが一番の実務ポイントです。
退院時薬剤情報管理指導料は、退院日に算定する点数です。
しかし、退院日当日に初めて薬剤部が退院を知るようでは、対応が間に合わないことがあります。
ですので、退院予定患者リストを薬剤部と医事課が確認できるようにしましょう。
退院予定日の2日前、遅くとも前日には、薬剤部が対象患者を確認できる流れが望ましいです。
次に、お薬手帳への記載です。
お薬手帳への記載は、退院後の医療機関や薬局に薬剤情報をつなぐ大切な手段です。
お薬手帳を持参していない患者さんへの対応も、院内で決めておく必要があります。
持参がない場合は、薬剤情報提供書を渡すのか。
退院時に家族へ持参を依頼するのか。
次回外来時に確認するのか。
こうした例外対応も含めて、運用ルールを決めておくと現場が迷いません。
次に、退院時指導と記録です。
患者さんやご家族に、退院後の薬の飲み方、変更点、注意点、副作用、飲み忘れ時の対応などを説明します。
そして、その内容を記録します。
この記録は、医療の質のためにも、算定根拠としても重要です。
できれば、退院時薬剤指導の記録テンプレートを作っておくとよいと思います。
たとえば、次のような項目です。
入院前の主な服薬状況。
入院中に変更・中止した薬剤。
退院時処方の内容。
患者・家族への説明内容。
副作用・相互作用に関する注意点。
お薬手帳への記載有無。
薬局等への情報提供の要否。
指導実施者。
指導日。
このようなテンプレートがあれば、記録のばらつきが減ります。
最後に、医事課での算定確認です。
退院時薬剤情報管理指導料は、薬剤部が実施していても、医事課が算定できると判断できなければ請求につながりません。
ですので、薬剤部から医事課へ、B014算定可否が分かる情報を共有する仕組みが必要です。
退院予定リストに算定可否欄を設ける。
電子カルテに算定フラグを立てる。
薬剤部が退院指導記録を入力したら医事課が確認する。
月次で未算定患者を照合する。
こうした運用を、病院の規模やシステムに合わせて作っていくことが大切です。
最終的には、次のチェックリストを院内で共有しておくとよいと思います。
入院時に服薬状況を確認しているか。
持参薬の内容と確認結果を記録しているか。
入院中の薬剤変更理由が分かるか。
退院予定患者を薬剤部が把握できているか。
退院時に患者・家族へ服薬指導を行っているか。
お薬手帳に必要な情報を記載しているか。
必要に応じて薬局・退院後の関係先へ情報提供しているか。
診療録等に指導内容を記録しているか。
医事課が算定可否を確認できるか。
月次でB014の算定率を管理しているか。
退院時薬剤情報管理指導料は、90点の小さな点数に見えるかもしれません。
しかし、令和8年度改定後は、病棟薬剤師の関与、ポリファーマシー対策、薬局連携、退院支援、病棟薬剤業務実施加算の実績管理に関わる重要な項目です。
大切なのは、個人任せにしないことです。
薬剤部だけに任せるのではなく、医事課、病棟、退院支援部門、医師が同じ流れを理解し、院内の標準業務として運用すること。
それが、算定漏れを防ぐだけでなく、患者さんが退院後も安心して薬を続けられる体制づくりにつながります。
今回のシリーズをきっかけに、ぜひ一度、自院の退院時薬剤情報管理の流れを確認してみてください。

