こんにちは。M&Cパートナーコンサルティングの村上佳子です。
最終回となる今回は、疑義解釈その8の中でも、訪問看護ステーションにとって非常に重要な、紹介料規制についてお話しします。
今回の疑義解釈では、「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」の改正を受けて、訪問看護ステーションが、他の事業者やその従業員に対して、利用者を紹介する対価として金品などの経済上の利益を提供することが禁止された趣旨と判断基準が示されました。
この問題は、訪問看護ステーションにとって非常に大きなテーマです。
なぜなら、訪問看護は、利用者さん本人やご家族の意思に基づいて、自由に選択されるべきものだからです。
疑義解釈では、特定の訪問看護ステーションへの利用者誘導につながるおそれがあること、利用者を経済上の取引の対象とすることで過剰な訪問看護につながるおそれがあること、保険財源の効果的・効率的な活用に対する国民の信頼を損なうおそれがあることなどが問題として示されています。
ここで大切なのは、禁止されるのが「紹介料」という名前の支払いだけではないということです。
今回の疑義解釈では、禁止行為に該当するかどうかについて、基本的に2つの要件が示されています。
1つ目は、訪問看護ステーションが、他の事業者やその従業員に対して、経済上の利益を提供していること。
2つ目は、それを利用者紹介の対価として行い、利用者が自分の訪問看護ステーションで指定訪問看護を受けるように誘引していることです。
経済上の利益には、金銭だけでなく、物品、便益、労務、饗応なども含まれます。また、通常価格より安く商品やサービスを購入できる利益も含まれます。
さらに重要なのは、契約書上の名目ではなく、実質で判断されるという点です。
たとえば、指定訪問看護の広報業務の委託料、訪問看護の際の車の運転業務の委託料、貸借料などに、実質的に利用者紹介の対価が上乗せされている場合には、契約書上の名目にかかわらず、禁止行為に該当すると判断される可能性があります。
これは、かなり踏み込んだ内容です。
「紹介料ではありません。広告料です」
「運転業務の委託料です」
「施設内のスペース利用料です」
このような名目であっても、金額が通常の相場より高い、訪問看護療養費の一定割合で設定されている、利用者数に応じて金額が変わる、といった場合には、実質的に紹介対価ではないかと見られる可能性があります。
その場合には、地域における通常の委託料や貸借料より高くないこと、社会通念上合理的な計算根拠があることを示せる必要があります。
また、高齢者向け住まい等との関係も重要です。
疑義解釈では、高齢者向け住まい等の入居要件として、併設された訪問看護ステーションから指定訪問看護を受けることを入居者に求め、利用者の個別の状況や必要性を踏まえずに訪問看護を行うことは「あってはならない」とされています。
ここで問われているのは、利用者さんの自由な選択です。
併設の訪問看護ステーションがあること自体が問題なのではありません。問題なのは、利用者さんが他の訪問看護ステーションを選べない、実質的に選択肢がない、必要性を十分に確認せず画一的に訪問看護を入れている、といった状態です。
訪問看護ステーションとしては、次の点を確認しておく必要があります。
紹介業者や高齢者向け住まい等との契約内容は適正か。
委託料や貸借料の金額に合理的な根拠があるか。
利用者数や訪問看護療養費に連動する支払いになっていないか。
利用者や家族に、複数の訪問看護ステーションを選択できることを説明しているか。
説明書や同意書に、自由選択の趣旨が明記されているか。
併設以外の訪問看護ステーションを利用している利用者がいるか。
訪問看護の必要性が、個別の状態に応じて判断されているか。
今回の疑義解釈では、包括型訪問看護療養費における緊急訪問看護加算・精神科緊急訪問看護加算についても、日々の状態変化や利用者の求めに対応する訪問看護は包括型訪問看護療養費に含まれるとされ、緊急加算の算定は、予見困難で重篤な症状の出現等により、主治医の明示の指示で通常とは著しく異なる対応を必要とした場合に限られると整理されています。
この点からも、訪問看護では、単に訪問回数や加算を増やすのではなく、利用者の状態に応じた必要性と、説明できる記録が求められていることがわかります。
今回のポイントは、次の一言です。
訪問看護では、契約の名目ではなく、利用者紹介や囲い込みにつながる実態がないかが見られます。
訪問看護ステーションの皆さまには、今回の疑義解釈をきっかけに、紹介業者、施設、高齢者向け住まい、関連法人との契約を一度点検していただきたいと思います。
そして、利用者さんやご家族に対して、訪問看護ステーションを自由に選べること、必要性に応じて訪問看護を行うことを、説明書・同意書・記録の形で残しておくことが大切です。
令和8年度改定は、訪問看護に対しても、量の拡大だけではなく、質、必要性、選択の自由、説明責任を求めています。
これからの訪問看護経営では、契約、記録、説明、選択権の4つを整えることが、ますます重要になります。

