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病院のBCPは「救急」「入院」「地域連携」で考える――災害訓練と施設基準対応のポイント(第5回/全6回)

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こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。

今回は、病院におけるBCPについてお話しします。

病院のBCPは、クリニックよりも範囲が広くなります。

外来だけでなく、救急、入院、病棟、検査、画像、手術、薬剤、給食、施設管理、医療機器、非常電源、地域連携まで関係するからです。

特に、令和8年度診療報酬改定では、救急外来医学管理料に関連して、BCPを策定し、そのBCPに基づく災害訓練を年1回以上実施することが重要なポイントになっています。

つまり、病院の場合は、BCPを作るだけでなく、訓練して記録を残すことまで考える必要があります。

では、病院のBCPはどのように考えればよいのでしょうか。

私は、まず「救急」「入院」「地域連携」の3つに分けて整理することをおすすめします。

1つ目は、救急です。

災害時には、救急外来に患者さんが集中する可能性があります。

救急搬送だけでなく、自力で来院する患者さん、家族に連れられて来る患者さん、薬が切れた患者さん、不安になって受診する患者さんなど、さまざまな方が来ます。

そのときに、誰が受付し、誰がトリアージし、誰が診察し、どの患者さんを優先するのか。

救急外来のBCPでは、この流れを決めておく必要があります。

特に大切なのは、診療スペースと人員配置です。

通常の救急外来で足りるのか。
発熱患者や感染症疑いを分ける場所はあるのか。
軽症者を待機させる場所はあるのか。
重症者の処置スペースは確保できるのか。
検査や画像診断はどこまで動かせるのか。

災害時には、通常の動線が使えないこともあります。

だからこそ、訓練では、実際に患者さんが来たと想定して、受付、トリアージ、診察、検査、処置、入院、転院までの流れを確認することが大切です。

2つ目は、入院です。

病院には、すでに入院している患者さんがいます。

災害時には、外から来る患者さんへの対応だけでなく、入院患者さんの安全確保が最優先になります。

停電したとき、人工呼吸器やモニターはどうなるのか。
非常電源はどの範囲まで使えるのか。
エレベーターが止まったら搬送はどうするのか。
給食は何食分提供できるのか。
水はどのくらいあるのか。
薬や医療材料の在庫は何日分あるのか。
夜間に発災した場合、病棟の人員は足りるのか。

こうしたことを、病棟単位で確認する必要があります。

特に中小病院では、職員数に限りがあります。

災害時に全員が出勤できるとは限りません。

そのため、BCPでは、最低限の人員でどの業務を優先するかを決めておくことが大切です。

例えば、清拭やリネン交換などは一時的に縮小する。
リハビリは緊急性に応じて調整する。
入浴は中止する。
食事介助や服薬管理、排泄介助、褥瘡対応、呼吸管理などを優先する。

このように、平時の業務をそのまま続けるのではなく、非常時の業務に組み替える発想が必要です。

3つ目は、地域連携です。

病院は、地域の中で単独で存在しているわけではありません。

消防、医師会、近隣病院、診療所、薬局、訪問看護、介護施設、行政、保健所などとの連携が必要です。

災害時に自院で受け入れられる患者数はどの程度か。
逆に、自院から転院搬送が必要な患者さんが出た場合、どこへ相談するのか。
在宅患者や介護施設入所者の急変にどう対応するのか。
地域の救急搬送ルールはどうなっているのか。

こうしたことは、病院のBCPに必ず関係します。

特に、救急医療を担う病院では、自院の中だけで訓練しても十分ではありません。

可能であれば、消防や近隣医療機関、行政との合同訓練や情報共有も検討したいところです。

ここで、施設基準対応として大事なことがあります。

それは、訓練記録を残すことです。

「訓練をしました」だけでは、後から確認できません。

訓練日。
参加者。
想定した災害。
訓練内容。
確認した手順。
発見された課題。
改善策。
次回までの対応期限。
責任者。

このような記録を残しておくことが大切です。

また、訓練は大規模なものだけでなくても構いません。

例えば、電子カルテ停止時の紙運用訓練。
夜間の職員参集訓練。
救急外来でのトリアージ訓練。
非常電源の切替確認。
備蓄品の確認訓練。
災害対策本部の立ち上げ訓練。
病棟での患者移送訓練。

こうした部分訓練を積み重ねることも有効です。

大事なのは、BCPに書いてあることを実際に試してみることです。

試してみると、必ず課題が出ます。

連絡網が古かった。
責任者が不在のときの代行者が決まっていなかった。
非常用の紙様式が足りなかった。
職員が保管場所を知らなかった。
備蓄品の期限が切れていた。
夜間は想定より人手が足りなかった。

こうした課題が見つかることは、悪いことではありません。

むしろ、訓練の目的は、課題を見つけることです。

そして、その課題をBCPに反映して、見直していくことが重要です。

BCPは、一度作って完成ではありません。

病院の体制は変わります。

職員も変わります。
診療機能も変わります。
届出している施設基準も変わります。
地域の連携先も変わります。
電子カルテやシステムも変わります。

だからこそ、定期的な見直しが必要です。

第5回のまとめです。

病院のBCPは、救急、入院、地域連携の3つで整理すると分かりやすくなります。

そして、救急医療を担う病院では、BCPに基づく訓練と記録管理が重要になります。

BCPは、書類ではなく、病院が非常時に動くための仕組みです。

次回は最終回として、BCPを作って終わりにしないための、院内研修、訓練、見直し、記録管理のチェックポイントを整理します。

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