こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。
第4回は、看護・多職種協働加算の実務についてお話しします。
この加算を考えるとき、どうしても最初に気になるのは人員配置です。
25対1をどう満たすのか。
様式9にどう反映するのか。
看護師だけでいけるのか、多職種をどう数えるのか。
もちろん、これは大事です。
ただ、現場運用を考えるうえでは、もう少し先に進めて考える必要があります。
つまり、「その人員を病棟で何に使うのか」です。
厚労省資料では、看護・多職種協働加算について、地域の急性期医療を担う医療機関で、患者さんの早期退院やADLの維持・向上を目指し、看護職員を含む多職種が協働して専門的な指導や診療の補助を行う体制を評価するとされています。対象職種としては、看護職員のほか、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、臨床検査技師が示されています。
ここで、200床未満病院にとって大切なのは、「すべての職種を新たに病棟専従で置く」ことではありません。
現実的には、今いる職員の動き方を変えることから始まります。
まず、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士です。
リハビリというと、訓練室で単位を算定するイメージが強いかもしれません。
しかし、看護・多職種協働加算で期待されているのは、病棟での生活場面に合わせた関わりです。
たとえば、ベッドから起き上がる。
トイレまで歩く。
食事の姿勢を整える。
病室内で安全に移動する。
こうした入院生活の場面そのものが、ADL維持・向上の大切な機会になります。
特に高齢急性期患者さんでは、リハビリの時間だけ頑張るのではなく、病棟での生活全体をリハビリにつなげる視点が必要です。
次に、管理栄養士です。
管理栄養士の病棟関与は、200床未満病院ではまだ十分に進んでいないことがあります。
しかし、高齢急性期患者さんでは、栄養状態が退院の可否に直結します。
食べられているように見えて、実際には半分しか食べていない。
主食は残している。
水分が足りない。
嚥下に不安がある。
食形態が合っていない。
こうしたことは、栄養部門が病棟に入って、実際の食事場面を見ることで初めて分かることがあります。
厚労省資料でも、管理栄養士の業務例として、食事状況の観察、食欲や嗜好の確認、必要栄養量や摂取栄養量の評価、食事変更の提案、食形態の調整、食事に関する相談対応などが示されています。
これは、退院支援にも直結します。
食事が安定しなければ、自宅退院も施設退院も難しくなります。
「食べられる状態を作ること」は、急性期病棟の重要な機能です。
次に、臨床検査技師です。
臨床検査技師が病棟運営に関わるイメージは、病院によって差があると思います。
しかし、急性期病棟では検査のタイミング、異常値の報告、追加検査の調整が、診療のスピードに影響します。
検体がなかなか出ない。
結果確認が遅れる。
異常値の共有が不十分になる。
検査室で行うべき検査の調整に時間がかかる。
こうした小さな滞りが、医師や看護師の負担を増やし、治療判断や退院判断を遅らせることがあります。
厚労省資料でも、臨床検査技師の業務例として、適時の検体検査等の実施、結果の確認、異常値等の報告、検査室等病棟外で行う検査の調整などが示されています。
では、これらの職種をどう動かせばよいのでしょうか。
私は、最初から完璧な多職種ラウンドを作ろうとしなくてもよいと思います。
200床未満病院では、人員に限りがあります。
ですから、まずは対象患者を絞ることが現実的です。
たとえば、75歳以上の救急入院患者。
入院時にADL低下リスクがある患者。
低栄養リスクがある患者。
独居または施設入所中の患者。
退院調整が必要になりそうな患者。
このような患者さんを、入院早期に多職種で拾い上げる仕組みを作ります。
次に、情報共有の場を決めます。
毎朝の短時間カンファレンスでもよいです。
週数回の多職種ラウンドでもよいです。
電子カルテ上の共有シートでもよいです。
大事なのは、情報共有が属人的にならないことです。
「分かる人だけが分かっている」状態では、加算の趣旨に合いません。
看護・多職種協働加算の施設基準では、多職種協働の目標、各職種が行う業務内容、情報共有の方法等を文書で整理し、配置される多職種間で共有していることが求められています。
つまり、運用ルールを文書化する必要があります。
ここは事務長さん、看護部長さん、リハ科長さん、栄養科長さん、検査科長さんが一緒に作るべきところです。
現場に任せきりにすると、「結局、何をすればよいのか」が曖昧になります。
逆に、事務部門だけで文書を作ると、現場で動かないものになります。
実際の患者さんの流れに合わせて、無理なく動く仕組みにすることが大切です。
看護・多職種協働加算は、収入確保のための加算であると同時に、病棟改革のきっかけになります。
看護師が抱え込んでいた業務を整理し、リハ職、管理栄養士、臨床検査技師が専門性を発揮する。
その結果、患者さんのADL低下を防ぎ、退院までの流れを早める。
この流れを作れるかどうかが、算定後の成否を分けると思います。
次回は、最終回として、算定に向けた院長・事務長のチェックリストを整理します。

