第3回 「失敗しててもいいじゃないか」~ 接遇とコミュニケーションが動き出すとき
「失敗してもいいじゃないか」「トライ&エラーでやってみようよ」
この言葉を、管理職として口にするのは、簡単なことではありません。 何故ならば、間違ったとき・失敗したときの影響を考えると、不安になるからです。 患者さんや利用者さんの安全、家族からの信頼、組織としての責任・・・など. 考えれば考えるほど、「失敗はできない」「どうしたらうまくやれるか・・・」と考えてしまうでしょう。
特に医療機関では、そのエラーが取り返しのつかない医療事故・感染事故につながることもあり、経験豊富な管理職であるほど、「失敗」という言葉に慎重にならざるを得ません。 それでも、接遇やコミュニケーションの現場では、また自走できるスタッフを育成しようとする現場では「失敗を許容できるかどうか」が、行動変容の大きな分かれ道になることがあります。
◆スタッフからの提案がない現場
ある医療機関での話です。 これまで紹介してきたように、管理職は指導に熱心で、基準やルールも明確でした。 大きなトラブルはなく、現場は一見、落ち着いて見えていました。
ただ、気になる点が一つありました。 ミーティングをしていても、スタッフはうつむいたままで、誰も何も意見を言いません。 いつの間にかミーティングは意見交換の場というより、決まったことへの連絡事項や申し送り事項の伝達で終わるようになっていて、どの部署よりも短時間で終わって、看護部長からは評価されていました。
しかし、判断を伴う場面では、必ず「どうしましょうか」と確認が入ります。 報告・連絡・相談はうまくいき、問題はないように見えていましたが、 「このような課題がありますが、こうしてみたいと思うのですが如何でしょうか?」 というような自身の考えを言うスタッフもいません。
「このままでは、現場が育たないかもしれない」 という不安を、師長は常に感じていました。
そんな中、現場の空気を少しずつ変えていく、ある一言が生まれます。
次回は、その小さな変化がどのように広がっていったのかを見ていきます。

長 幸美(ちょう ゆきみ)
(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。
