こんにちわ。事務長ねっと編集部です。
さて、「AIに仕事を奪われる時代が来る」
そんな言葉を耳にする機会が増えました。特に事務作業の多い医療機関では、「受付や会計、レセプト、書類作成までAIがやるようになったら、事務職は不要になるのではないか」と不安を感じる人もいるかもしれません。
しかし実際には、AIは仕事を奪う存在というより、「仕事のやり方を変える存在」です。
そして、その変化を最も味方につけやすい立場にいるのが、クリニックの事務長です。
事務長の仕事は、単に書類を処理することではありません。現場で起こる問題を予測し、先回りして準備し、人と人をつなぎ、組織全体が円滑に回るように整えることです。
この「考える」「準備する」「整える」という仕事は、AIと非常に相性が良い分野です。
たとえば、私などはAIが大好きで、以前から、セミナーをする前に、本番で出そうな質問を先にAIに作ってもらっておくなんてことをしていました。参加者から実際に寄せられる質問を想定し、あらかじめ回答を準備しておくことで、セミナーの質を高めるためです。
これは、クリニックの事務長業務にも応用できます。
たとえばAIに対して、次のように依頼することができます。
- 70代で高血圧と糖尿病を持つ患者
- 仕事をしながら通院している40代男性
- 初診で不安が強い若い母親
- 認知症の親を連れてくる家族
- 在宅医療を希望する独居高齢者
こうした「仮想の患者像」を設定し、その患者が受付や会計、予約、検査説明、診療報酬、在宅医療、マイナ保険証、紹介状などについて、どのような質問をするかをAIに考えてもらうのです。
すると、自院では想定していなかったような質問が次々に出てきます。
「紹介状がなくても受診できますか?」
「マイナ保険証を忘れた場合はどうなりますか?」
「訪問診療と往診の違いは何ですか?」
「家族が代理で薬を受け取れますか?」
「介護保険と医療保険はどう違うのですか?」
こうした質問を事前に洗い出しておけば、受付マニュアルや電話対応マニュアル、ホームページのFAQ、院内掲示、スタッフ研修に活用できます。
つまりAIは、「現場で困る前に準備する力」を高めてくれるのです。
また、AIは文章作成の補助にも役立ちます。
たとえば、診療報酬改定があった際に、厚生労働省の事務連絡を読んだだけでは、医師や看護師、受付スタッフにどう説明すればいいか悩むことがあります。
そんな時、AIに「受付スタッフ向けにやさしく説明して」「看護師向けに現場目線でまとめて」「院内会議用に箇条書きで整理して」と依頼すれば、同じ内容を相手に合わせて翻訳することができます。
事務長は日々、多くの情報を扱っています。しかし本当に価値があるのは、情報を持っていることではなく、「相手に合わせて伝えられること」です。
AIは、その翻訳役として非常に優秀です。
さらに、クレームやトラブル対応のシミュレーションにも活用できます。
たとえば「予約時間より待たされて怒っている患者」「会計が高いと不満を言う家族」「電話口で強い口調の人」など、実際に起こりそうな場面を設定し、AIとロールプレイを行うこともできます。
これにより、若手スタッフの教育や、受付対応の標準化にもつながります。
もちろん、AIは万能ではありません。
現場の空気を読むこと、患者の不安を感じ取ること、スタッフ同士の微妙な関係を調整すること、最終的な判断を下すことは、人間にしかできません。
しかし、だからこそ重要なのです。
AIに奪われるのではなく、AIに「考える材料」を作らせる。 AIに代わりに答えを出させるのではなく、より良い判断のための選択肢を出させる。
そうした使い方ができる事務長は、これからの時代にますます価値が高くなります。
