言葉が相手に届かない状況について様々な事例を用いて考察しました。例え敬語を完璧に使えても、それが相手に届かないなら、まったく意味がありませんでした。そこで、今回はコミュニケーションにおいて本当に大切で、効果的なものが何であるかを具体的な事例を通して見出していきましょう。
医療機関では、敬語がそこまで完璧ではないけれども、患者さんに寄り添い、心のこもった対応を心がけているスタッフも存在します。彼らの言葉遣いはシンプルであるにもかかわらず、患者さんは安心感を持ち、「ありがとう」としみじみ感謝の言葉を述べるのです。この明確な違いは、一体どこから来るのでしょうか?
その答えは、やはり「心」に他ならないのです。敬語が素晴らしい初めの事例でも、相手に心のこもったペースで寄り添わなければ、その言葉は空回りしてしまいます。2つ目の事例においても、アイコンタクトや心の交流が不足していたために、患者さんは戸惑っていました。そして、この心の交流こそがコミュニケーションを成功させるキーとなっていることに気づきます。
私たちが学べるのは、敬語の技術を超えた「思いやり」と「心のこもった対応」が、どれだけ大切かということです。これらは、ただ言葉を投げかけるだけでなく、相手をしっかりと見つめ、その存在を大切に思う心があって初めて成り立つものです。相手が「自分が大切にされている」と感じることで、安心感が生まれ、より深い信頼関係を育むことができるのです。
だからこそ、日々のコミュニケーションの中で、心を込めて丁寧に接することを意識しましょう。それは決して特別なことではなく、ちょっとした優しさや配慮が生み出すものです。人と人とが心を通わせるとき、互いの人生が少しだけ温かく、そして少しだけ豊かになりますね。これこそが、私たちが目指すべき本当のコミュニケーションの形ではないでしょうか。

長 幸美(ちょう ゆきみ)
(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。
