今年度の医療介護同時改定の主要なテーマの一つは「生産性の向上」でした。人材不足が深刻な社会問題となっている今、デジタル技術やDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用して業務の効率を高めることが不可欠です。そのためには、院内や施設内のデジタルインフラを整備する必要があります。しかし、インターネット接続環境は外部からの攻撃リスクも伴います。つい先日もKADOKAWAが大規模なサイバー攻撃を受けました。過去には大手病院が攻撃を受けた例もあります。2022年10月31日、大阪急性期総合医療センターがランサムウェアの攻撃を受け、電子カルテシステムに障害が発生しました。復旧には二か月以上を要しましたが、こうした事態はどの事業所にも起こり得ることです。ランサムウェアとは、感染したコンピューターを停止させたり、データを暗号化し、復旧のために身代金を要求する悪質なウイルスのことであり、その名称は「ランサム(身代金)」と「ソフトウェア」からきています。ランサムウェアの被害は2015年頃から国内でも増加しており、初期は無差別にメールを送る手法が一般的でした。しかし、近年では標的を絞った「標的型ランサムウェア」が増加しています。これは、特定のターゲットを調査し、脆弱性を見つけ出して攻撃する方法です。標的型ランサムウェアは、パスワードで保護された情報を盗み出し、ウイルスを仕込むことで施設を感染させます。感染を防ぐには、インターネットの利用を避けるのも一つの方法ですが、これからの時代、生産性を向上させるためには避けて通ることはできません。定められたルールを守ることが最も重要な防衛手段です。・不審なメールやリンクを開かない・最新のセキュリティソフトを導入し、常にチェックを行う組織には多くの人が集まるため、リスクも高くなります。ルールを逸脱する人が出てくることも避けられません。デジタル技術を活用するためには、人員管理をより丁寧に行う必要があります。