あなたが現在見ているのは 【補講】クリニック同士だけではない――中小病院と組む「連携型強化型」という選択肢(第8回/全8回)

【補講】クリニック同士だけではない――中小病院と組む「連携型強化型」という選択肢(第8回/全8回)

→目次に戻る

こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。

これまで7回にわたって、常勤医師1名の内科系クリニックが、訪問診療を始め、在支診を取得し、最終的に「連携型機能強化型在支診」を目指す流れをお話ししてきました。

その中で、

「連携型なら、近くのクリニックを3つくらい集めればいいんですよね?」

と思われた方もいるかもしれません。

でも実は、連携相手はクリニックだけではありません。

地域の中小病院と一緒に連携型を作る、という選択肢もあります。

これは、常勤医師1名のクリニックにとって、かなり現実的な方法になる場合があります。

■「診療所3院」でなくてもいい

連携型機能強化型の在宅支援連携体制は、診療所だけで構成する制度ではありません。

原則として許可病床数200床未満の病院も、連携体制の構成員になることができます。医療資源の少ない地域では、一定の場合に280床未満まで対象になります。

たとえば、

A内科クリニック 常勤医1名

B地域病院 150床・在宅担当常勤医2名

という形です。

連携型では、連携全体で在宅医療を担当する常勤医師3名以上が必要ですから、病院側に在宅医療を担当する常勤医師が2名いれば、医師数の面では条件を満たせる可能性があります。

つまり、

「うちの地域には、在宅をやっているクリニックが3つもない」

という場合でも、

地域病院と組めないか

という視点を持っていいんですね。

■病院と組むメリットは「医師数」だけではありません

私は、むしろこちらの方が重要だと思います。

在宅医療で一番困る場面の一つが、

「家ではもう難しい。入院が必要だ」

というときです。

肺炎になった。

心不全が悪化した。

食事が取れなくなった。

家族だけでは介護を続けられなくなった。

こういうとき、クリニックは病院につながなければなりません。

クリニック同士だけの連携であれば、別途、緊急入院を受け入れてくれる病院を確保する必要があります。

一方、地域病院そのものが在宅医療チームに入っていれば、

自宅で診る

急変時に往診する

必要なら病院へ入院

状態が落ち着いたら再び自宅へ

という流れを一つの連携体制の中で作りやすくなります。

これは患者さんやご家族にとっても、大きな安心材料だと思います。

■病院にも「在宅医療を支える役割」がある

病院というと、

「在宅医療はクリニックの仕事で、病院は入院だけ」

と思われがちです。

でも、制度は必ずしもそういう作りになっていません。

在宅療養支援病院、いわゆる「在支病」という仕組みがあります。

在支病は、24時間の連絡や往診、訪問看護、緊急入院などを通じて、地域の在宅医療を支える病院です。

さらに、機能強化型の在支病には、診療所とは少し違った病院らしい評価があります。

たとえば、病院が一定数の病床を在宅患者の緊急入院用として常時確保し、在支診などから年間一定数以上の緊急入院を受け入れている場合など、「自ら往診する」だけではなく、「入院を引き受ける」ことによって地域の在宅医療を支える実績も評価されています。

私は、ここが非常に大切だと思います。

診療所には診療所の役割がある。

病院には病院の役割がある。

全員が同じことをする必要はありません。

それぞれの得意な機能を持ち寄って、地域として24時間の在宅医療を作る。

連携型の本来の意味は、そこにあるのではないでしょうか。

■ただし「入院先にしている」だけでは連携型ではありません

ここは注意してください。

たとえば、

「急変したら、いつも○○病院にお願いしています」

という関係があります。

これはとても大切な連携です。

でも、それだけで、その病院が「連携型機能強化型」の正式な構成員になるわけではありません。

強化型の在宅支援連携体制に病院が正式に参加するのであれば、病院側も原則として在宅療養支援病院として必要な体制を整え、所定の要件を満たす必要があります。

ですから、

「緊急入院先としての連携」

と、

「強化型の連携グループを一緒に構成する」

は、分けて考えましょう。

前者だけでも在支診を運営するうえでは非常に重要です。

後者まで進めるのであれば、クリニック側だけではなく、病院側にも「一緒に地域の在宅医療を担う」という意思と体制が必要になります。

■大きな病院とは、また違う連携になる

もう一つ整理しておきたいのが、200床以上の大きな病院との関係です。

200床以上の病院には、「在宅療養後方支援病院」という別の制度があります。

これは、在宅療養中の患者さんについて、24時間連絡を受け、必要な場合には入院を受け入れるなど、後方支援を行う仕組みです。

ですから、

200床未満程度の地域病院
→ 連携型の構成員として一緒に強化型を目指す

という形と、

大規模病院
→ 後方支援病院として緊急入院を支えてもらう

という形は、制度上も少し違います。

地域の病院を考えるときは、

「この病院は、どの役割で在宅医療に参加してもらうのか」

を整理すると分かりやすいと思います。

■病院と組んでも、自院の実績は必要です

ここも忘れてはいけません。

「病院と組めば、病院の実績で全部クリアできるんですよね?」

とはなりません。

連携型では、クリニック側にも一定の実績が必要です。

内科系クリニックであれば、原則として直近1年間に、

自院の緊急往診4件以上
自院の看取り等2件以上

という実績を意識する必要があります。

つまり、病院は不足している機能を補ってくれる大切なパートナーですが、

クリニック自身も、在宅患者の急変や看取りをきちんと担う

ことが前提です。

これは、これまでの第4回でお話しした内容と変わりません。

■例えば、こんなチームです

常勤医師1名のA内科クリニック。

地域に150床のB病院があり、内科医が複数いて在宅医療にも関心がある。

Aクリニックは、日常の訪問診療と患者さんの生活に近い部分を担う。

訪問看護ステーションと密接に連携し、必要なときには緊急往診する。

B病院は、在宅医療を担当する医師を出しながら、24時間体制にも参加する。

そして、入院が必要になった患者さんを受け入れる。

月1回、クリニック、病院、訪問看護などでカンファレンスをする。

患者情報や急変時の方針も共有している。

こういう仕組みができれば、

「地域のかかりつけ医」と「地域病院」が一緒に患者さんを最後まで支える

という、かなり強い在宅医療体制になります。

私は、地域によっては「クリニック3院を探す」よりも、この形の方が現実的だと思います。

■病院側にもメリットがあります

これはクリニック側だけの話ではありません。

中小病院にとっても、

「地域でどの役割を担う病院になるのか」

は、これからますます重要になります。

人口が減り、病床を埋めることだけを考える経営が難しくなる中で、

在宅患者が悪くなったときに受け入れる。
治療したら地域へ戻す。
再び在宅で支えてもらう。

という地域包括ケアの流れの中で役割を持つことは、一つの方向性になります。

クリニックにとっては、入院を任せられる安心感。

病院にとっては、退院後を任せられる安心感。

この関係ができれば、双方にメリットがあります。

■「強化型を取るため」から話を始めない

最後に、ここはぜひ意識していただきたいと思います。

地域病院の院長先生のところへ行って、

「強化型を取りたいので、うちと組んでください」

といきなり話しても、なかなかうまくいかないと思います。

そうではなく、

「地域の患者さんが通院できなくなった後も、できるだけ自宅で支えたいと思っています。でも、入院が必要になる患者さんもいます。先生の病院と、もう少し在宅患者さんを一緒に支える仕組みを作れないでしょうか」

という話から始めてみる。

まず患者さんを中心に置くんですね。

そこから、

24時間の連絡はどうする。

急変時はどうする。

どこまでクリニックで診る。

どの段階で病院へ送る。

退院したらどう戻す。

情報をどう共有する。

という実際の連携を作っていく。

そして、その体制が強化型の施設基準にも合っているのであれば、正式な連携型として届け出る。

私は、この順番が一番自然だと思います。

常勤医師1名だから、できることが少ないのではありません。

一人で全部やろうとしない。

クリニック同士で支え合う方法もある。

訪問看護と支え合う方法もある。

そして、地域の中小病院と役割を分ける方法もある。

地域によって医療資源は違います。

だからこそ、「強化型になるための正解は一つ」と考えず、

自分たちの地域にある医療資源をどう組み合わせれば、患者さんを24時間支えられるのか。

そこから連携の形を考えていただければと思います。

それが、常勤医師1名のクリニックが無理なく「強化型」を目指すための、もう一つの有力な道です。

→目次に戻る