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身だしなみを「個人任せ」にしない――医療機関全体で続ける仕組みづくり(第6回/全6回)

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皆さん、こんにちは。M&Cパートナーコンサルティングのパートナーコンサルタント、長幸美です。

これまで、医療機関における身だしなみについて、清潔感、表情、姿勢、髪型、香り、行動、クレーム予防など、さまざまな角度からお話ししてきました。

最終回となる今回は、身だしなみを職員個人の意識だけに任せず、医療機関全体で継続するための仕組みについて考えます。

「各自で気を付けましょう」では続きません

身だしなみについて、

「社会人なのだから、本人が分かっているはず」

「常識の範囲で各自気を付けてください」

としている医療機関は少なくありません。

しかし、「常識」は人によって違います。

育ってきた環境、年代、前職、価値観によって、服装や髪型、香りなどの捉え方は異なります。

ある職員にとっては普通のネイルでも、別の職員には派手に見えるかもしれません。本人には気にならない柔軟剤の香りでも、患者さんには強く感じられることがあります。

基準を個人の常識に任せると、注意する側もされる側も納得しにくくなります。

だからこそ、医療機関として、

「私たちは、どのような考え方で身だしなみを整えるのか」

を明確にする必要があります。

最初に「目的」を共有しましょう

身だしなみのルールをつくるとき、いきなり禁止事項から始めないことが大切です。

「ネイルは禁止」

「髪の色はこの範囲」

「アクセサリーは禁止」

とだけ伝えると、職員には自分の自由を制限されたように感じられます。

まずは、目的を共有しましょう。

私たちが身だしなみを整えるのは、

・患者さんに安心していただくため
・安全に業務を行うため
・感染対策を徹底するため
・職員が仕事に集中するため
・医療機関全体の信頼を守るため

です。

この目的を職員が理解すると、ルールを守る意味も分かりやすくなります。

写真や具体例を使うと伝わりやすくなります

「清潔感のある服装」「派手すぎない髪型」といった表現は、人によって解釈が異なります。

そこで役立つのが、写真やイラストを使った身だしなみ基準です。

制服の正しい着用例、長い髪のまとめ方、名札の位置、適切な靴、受付カウンターの整った状態などを写真で示すと、基準が伝わりやすくなります。

悪い例を掲載する場合には、特定の職員をモデルにして批判するような見せ方は避けましょう。

誰かを責めるためではなく、全員が同じ基準を理解するための資料として作成することが大切です。

チェックリストは短く、続けられるものに

身だしなみチェックリストをつくる場合は、項目を増やしすぎないようにしましょう。

項目が多いと、最初は確認していても、次第に形だけになってしまいます。

たとえば、出勤時には次の五つを確認します。

1.制服に汚れ、シワ、ほつれがない
2.髪が顔や目にかからない
3.爪、ひげ、靴が整っている
4.強い香りやたばこ臭がない
5.名札を正しい位置に着用している

これに加えて、部署ごとに必要な項目を設定するとよいでしょう。

受付であれば、カウンター上の私物や書類を確認する。診療補助を行う職員であれば、爪やアクセサリー、髪型を重点的に確認する、といった方法です。

朝礼やミーティングで短く確認する

身だしなみは、一度研修を受けただけでは定着しません。

朝礼で月に一度、一つのテーマを取り上げるだけでも効果があります。

「今月は、患者さんへの挨拶の際に顔を上げることを意識しましょう」

「今週は、受付カウンターに私物を置かないよう確認しましょう」

というように、テーマを一つに絞ると実行しやすくなります。

季節に合わせた確認も有効です。

夏場は汗や体臭、冬場は制服の上に着用するカーディガンや防寒着、花粉の時期は髪や衣服の管理など、時期に応じて注意点を共有しましょう。

注意ではなく「支援」として伝えましょう

身だしなみの指導は、とてもデリケートです。

体臭、口臭、髪型、メイクなどを人前で注意されると、本人は強く傷つくことがあります。

注意が必要な場合は、必ず個別に、周囲に聞こえない場所で伝えましょう。

その際、

「私は気に入らない」

「普通は分かるでしょう」

という言い方をしてはいけません。

「患者さんと近い距離で対応するため、香りを少し控えていただけますか」

「業務中に髪が顔へかかっているので、安全のためにまとめ方を一緒に考えましょう」

と、業務上の理由と具体的な改善方法を伝えます。

体調や皮膚疾患、宗教上・文化上の事情、障害など、本人だけでは変更が難しい事情がある場合もあります。理由を決めつけず、まず本人の話を聞き、必要な配慮を検討しましょう。

管理者が手本を示すことが最も重要です

どれだけ立派な身だしなみ基準を作っても、院長や管理者が守っていなければ定着しません。

管理者がシワのある白衣を着ている、名札を着けていない、受付で私的なスマートフォンを見ている。そのような状態で職員だけに注意をしても、納得してもらうことは難しいでしょう。

管理者自身が身だしなみを整え、患者さんへの挨拶や職員同士の言葉遣いを実践することが必要です。

そして、できていない点を探して注意するだけでなく、よい行動を認めて伝えましょう。

「今の患者さんへの声かけ、とても安心感がありました」

「カウンターがきれいに整理されていますね」

と具体的に伝えることで、望ましい行動が職場に広がります。

身だしなみは医療機関の文化です

身だしなみは、制服の着方をそろえることだけではありません。

患者さんを大切にする気持ち、周囲への配慮、安全を守る姿勢、職員同士を尊重する態度が、目に見える形になったものです。

職員一人ひとりが、

「患者さんに安心していただくために、自分にできることは何だろう」

と考えられる職場になれば、身だしなみだけでなく、接遇や業務の質も少しずつ高まっていきます。

大切なのは、完璧を求めて細かく取り締まることではありません。

目的を共有し、基準を分かりやすく示し、互いに声をかけ合いながら、継続して整えていくことです。

長さんのワンポイントアドバイス

まずは、院内の身だしなみ基準を一から作り直そうとしなくても構いません。

現在の職場を患者さんの目線で見て、

「一つだけ変えるとしたら、何を変えるか」

を話し合ってみてください。

挨拶のときに顔を上げる。受付カウンターの私物をなくす。制服のシワを確認する。どれか一つでも、全員で続ければ職場の印象は変わります。

身だしなみは、自分を飾ることではありません。

患者さんに安心と信頼を届けるために、自分自身と職場を整えることです。

このシリーズが、皆さんの医療機関で身だしなみについて話し合うきっかけになればうれしく思います。

今日からできるチェック

□ 身だしなみの目的を職員全員で共有している
□ 写真や具体例を使った分かりやすい基準がある
□ 短く続けやすいチェック方法を取り入れている
□ 指導は個別に行い、本人の事情にも配慮している
□ 院長や管理者が率先して手本を示している

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