こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。
今回は、令和8年度診療報酬改定における「精神科急性期医師配置加算」の見直しについてお話しします。
精神科病院、精神病院の院長先生や事務長さんにとって、この改定はぜひ押さえておきたい内容です。
ただし、最初に申し上げておきたいのは、これは単に「クロザピンの要件が少し変わった」という話ではない、ということです。
今回の見直しは、精神科急性期医師配置加算が、これまで以上に「病院全体として、急性期の精神医療や専門的な治療にどう対応しているか」を見る方向に動いた、ということだと私は考えています。
精神科急性期医師配置加算は、精神病棟において医師を手厚く配置している医療機関を評価する加算です。
もちろん、医師配置の評価であることは変わりません。
しかし、令和8年度改定では、治療抵抗性統合失調症に対するクロザピン治療の実績について、評価の見方が見直されました。
これまでは、精神科急性期医師配置加算1や3では、クロザピンの新規導入実績を「当該病棟」で見る形でした。
つまり、加算を算定する病棟で、どれだけクロザピンを新規導入したかが問われていたわけです。
ところが、実際の精神科医療の現場では、クロザピン導入は急性期病棟だけで完結するものではありません。
慢性期病棟に長く入院している患者さんの中に、治療抵抗性統合失調症の方がいることもあります。
外来で継続している患者さんが、導入のタイミングで入院することもあります。
急性期病棟、慢性期病棟、外来、薬剤部、検査部、看護部、医事課が関わりながら、病院全体で支える治療です。
そう考えると、クロザピンの実績を「病棟単位」だけで見るのは、現場の実態と少しずれていた面があります。
今回の改定では、そこが「医療機関全体の実績」に見直されます。
これは、精神科病院にとって大きな意味があります。
急性期病棟だけに実績を閉じ込めるのではなく、病院全体でクロザピン治療に取り組んでいるか。
治療抵抗性統合失調症の患者さんを、きちんと見つけ、説明し、導入し、継続管理できる体制があるか。
ここが問われるようになったということです。
また、精神科急性期医師配置加算2のイについても、15対1入院基本料が対象に追加される見直しがあります。
ただし、これはすべての精神科単科病院にそのまま当てはまる話ではありません。
内科や外科等の標榜、精神病床の割合、24時間の救急医療提供体制など、別の要件も関係します。
ですので、「15対1も対象に入ったから、すぐ自院も取れる」という見方ではなく、自院の病棟構成、病床割合、救急体制、標榜診療科を確認する必要があります。
今回の連載では、精神科急性期医師配置加算の見直しを、6回に分けて整理していきます。
第1回の今日は、全体像です。
一番大事なのは、今回の改定を「点数の変更」だけで見ないことです。
精神科病院が、急性期機能、専門治療、クロザピン導入、退院後の外来継続までを、病院全体でどう設計していくか。
そこに今回の改定の本質があります。
事務長さんには、ぜひ医事課だけの話にしないでいただきたいと思います。
医局、看護部、薬剤部、検査部、地域連携室、外来、病棟、そして経営層で共有すべきテーマです。 次回は、今回の中心である「クロザピン実績が病棟単位から病院全体へ見直された意味」について、もう少し詳しく見ていきます。

