あなたが現在見ているのは 院長・事務長のための実務チェックリスト――柔軟化を“人員削減”ではなく“配置設計”に活かす(第6回/全6回)

院長・事務長のための実務チェックリスト――柔軟化を“人員削減”ではなく“配置設計”に活かす(第6回/全6回)

→目次に戻る

こんにちは。
M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。

6回にわたって、令和8年度診療報酬改定における常勤要件・人員配置基準の柔軟化についてお話ししてきました。

最終回の今回は、200床未満の病院が実際に確認すべきポイントを、院長先生・事務長さん向けに整理します。

まず、繰り返しになりますが、今回の柔軟化は、
人を減らしてよいという改定ではありません。

人手不足の中でも、質の高い医療提供体制を維持するために、配置基準や専従要件を現実に合わせて見直す改定です。

ですから、病院としてやるべきことは、
「基準が緩くなったから安心」
ではありません。

むしろ、
「自院の人員配置を、今の働き方と施設基準に合わせて再点検する」
ことです。

最初に確認したいのは、看護職員の配置管理です。

看護職員が一時的に不足した場合、一定条件のもとで3か月を超えない期間に限り、変更の届出を行わなくてもよい取扱いが設けられました。

ただし、これは採用努力をしていることが前提です。

そのため、次の点を確認してください。

求人票は有効な状態で出ているか。
ハローワークやナースセンターを活用しているか。
自院ホームページに採用情報を掲載しているか。
紹介会社を使う場合、適正な事業者を含めているか。
採用活動の記録が残っているか。
看護師不足時の報告体制が決まっているか。
残っている看護職員に過度な負担がかかっていないか。

次に、常勤31時間化への対応です。

常勤職員の常勤要件に係る所定労働時間数は、週32時間から週31時間へ見直されます。

ここでは、次の点を確認します。

週31時間以上勤務の職員を常勤として整理できるか。
週4日以上勤務しているか。
育児・介護等による短時間勤務者の扱いを確認しているか。
常勤要件と常勤換算を混同していないか。
医師、医師事務作業補助者、リハビリ職種、管理栄養士など、施設基準に関係する職員の勤務時間を一覧化しているか。

特に、
「常勤として扱える」
ことと、
「常勤換算で1人分になる」
ことは、必ず分けて確認してください。

3つ目は、専従者の業務実態です。

感染対策向上加算、医療安全対策加算、緩和ケア、褥瘡管理、入院栄養管理体制など、専従・専任が関係する施設基準について、誰がどの役割を担っているかを整理します。

今回の改定では、感染制御チームの専従職員による介護保険施設等への助言や、医療安全管理者が所定労働時間に満たない場合の月16時間までの他業務従事など、一定の柔軟化が示されています。

確認すべき点は、次のとおりです。

専従者・専任者の一覧はあるか。
どの施設基準に関係しているか。
本来業務の内容が明確か。
他業務に従事している場合、その時間を記録しているか。
介護保険施設等への助言を行った場合、依頼元、内容、時間を記録しているか。
月16時間などの上限を管理しているか。

4つ目は、摂食嚥下支援とリハビリ職種の活用です。

摂食嚥下機能回復体制加算では、摂食嚥下チームの言語聴覚士について、専従要件が見直され、専任でもよい方向になっています。

また、疾患別リハビリテーション料や特定入院料に配置された療法士についても、専門性を活かした指導等を推進する見直しが行われています。

ここでは、次の点を確認します。

摂食嚥下支援チームのメンバーは明確か。
ST、看護師、管理栄養士、医師、歯科等の役割分担はあるか。
嚥下評価の対象患者をどう抽出しているか。
経管栄養から経口摂取への回復支援を記録しているか。
PT・OT・STが病棟カンファレンスに関わっているか。
病棟での移乗、離床、食事、排泄、退院支援に専門職が関与しているか。

5つ目は、施設基準管理を一人任せにしないことです。

200床未満の病院では、施設基準の管理が医事課長や事務長に集中しがちです。

でも、今回の改定は、医事課だけでは管理できません。

看護配置は看護部。
医師事務作業補助者は医局・事務部。
感染対策はICT。
医療安全は医療安全管理部門。
栄養管理は栄養科。
摂食嚥下はSTや看護部。
リハビリ職種はリハビリ部門。

それぞれの現場とつながっていないと、施設基準の実態を正しく把握できません。

私は、200床未満の病院こそ、月1回でよいので、施設基準ミーティングを行うことをおすすめします。

参加者は、事務長、医事課、看護部長、リハビリ責任者、栄養科、必要に応じて医師や薬剤師。

確認する内容はシンプルで構いません。

人員配置に変更はないか。
退職予定者はいないか。
産休・育休・休職予定はないか。
新しい採用予定はあるか。
専従者の業務実態に問題はないか。
届出が必要な変更はないか。
記録が不足しているものはないか。

これだけでも、施設基準のリスクはかなり下がります。

今回の常勤要件・人員配置基準の柔軟化は、病院経営にとってチャンスでもあります。

週31時間勤務の人材を採用しやすくなる。
専従者の専門性を地域連携に活かしやすくなる。
ST・PT・OTを病棟機能の向上に活かしやすくなる。
看護職員不足時にも、一定の条件下で冷静に対応しやすくなる。

ただし、それはすべて、
記録があること
説明できること
現場と事務部門が連携していること
が前提です。

院長先生、事務長さんに最後にお伝えしたいのは、今回の改定を、単なる「基準緩和」として受け止めないでください、ということです。

これは、200床未満病院が人手不足の中でも地域医療を支えるために、
人員配置を再設計するきっかけ
です。

誰を、どこに、どの役割で配置するのか。

その配置が、患者さんの医療の質、職員の働きやすさ、そして病院経営の安定につながっているか。

ここを考えることが、今回の改定対応の本質だと思います。

→目次に戻る