あなたが現在見ているのは 対象患者が広がる? 要介護・要支援の患者さんをどう拾い上げるか(第2回/全5回)

対象患者が広がる? 要介護・要支援の患者さんをどう拾い上げるか(第2回/全5回)

→目次に戻る

こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。

今回は、令和8年度診療報酬改定における地域包括診療加算・地域包括診療料の見直しのうち、「対象患者の拡大」についてお話しします。

今回の改定で、先生方にまず確認していただきたいのが、自院の患者さんの中に、これまで対象外と思っていたけれど、改定後は対象になり得る方がいないか、という点です。

従来、地域包括診療加算・地域包括診療料の対象は、脂質異常症、高血圧症、糖尿病、慢性心不全、慢性腎臓病、認知症の6疾病のうち、2つ以上を有する患者さんが中心でした。

この考え方自体は、改定後も残ります。

一方で、今回新たに重要になるのが、要介護・要支援の患者さんです。

改定後は、脂質異常症、高血圧症、糖尿病、慢性心不全、慢性腎臓病のいずれかを有しており、かつ介護給付または予防給付を受けている要介護・要支援の患者さんも、対象に加わります。

つまり、たとえば高血圧症だけで通院している患者さんであっても、要介護認定を受けて介護サービスを利用している場合には、対象になり得るということです。

これは、クリニックの現場にとっては非常に大きい見直しです。

なぜなら、外来で慢性疾患を診ている患者さんの中には、すでに介護保険サービスを利用している方が少なくないからです。ただし、医療機関側がその情報をきちんと把握できていないことも多いのです。

「デイサービスに行っています」
「ヘルパーさんが来ています」
「ケアマネさんがいます」

患者さんやご家族との会話の中では、こうした情報が出ているかもしれません。しかし、それが診療録やレセコン上で、算定判断に使える情報として整理されているかというと、必ずしもそうではありません。

今回の改定対応で大切なのは、病名だけで患者さんを拾うのではなく、「慢性疾患+介護保険」という視点で対象患者を確認することです。

具体的には、まず高血圧症、糖尿病、脂質異常症、慢性心不全、慢性腎臓病で継続通院している患者さんをリストアップします。

そのうえで、介護保険の利用状況を確認します。

確認方法としては、問診票に介護認定の有無を追加する、受付で介護保険証や負担割合証の有無を確認する、看護師の問診時にケアマネジャーの有無を確認する、定期的に患者さんやご家族へ介護サービス利用の有無を確認する、といった方法が考えられます。

ここで注意したいのは、「要介護認定を受けていること」と「実際に介護給付または予防給付を受けていること」は、実務上の確認ポイントが少し違うということです。

単に認定を受けているだけでなく、介護サービスを利用しているか、予防給付を受けているかを把握する必要があります。ケアマネジャーがいる場合には、連携先として情報を整理しておくとよいでしょう。

また、認知症を有する患者さんについても、対象の整理が行われています。

改定後は「認知症を有する患者等の場合」として、認知症を有する方、または介護給付・予防給付を受けている要介護・要支援の方で、認知症以外の疾病を1つ以上有している患者さんが対象になります。

ただし、同じ月に一定数を超える内服薬や、抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬を一定数以上含む処方を受けている場合には、対象から外れる要件があります。

このため、対象患者の確認では、病名、介護保険、認知症の有無、処方薬の内容をセットで見る必要があります。

先生方におすすめしたいのは、いきなり全患者で完璧に整理しようとしないことです。

まずは、定期通院している慢性疾患患者さんのうち、75歳以上、家族同伴が多い方、通院間隔が安定している方、介護サービスの話が出ている方などから確認を始めると、現場にも無理がありません。

また、受付や看護師さんに「介護保険を使っていますか」と聞いてもらうだけではなく、聞いた情報をどこに記録するかを決めておくことが大切です。

レセコンのメモ欄、電子カルテの患者属性、診療録の定型欄、院内の対象患者リストなど、自院で使いやすい方法で構いません。

重要なのは、誰が見ても「この患者さんは地域包括診療加算・地域包括診療料の対象になり得る」と分かる状態にすることです。

今回の対象拡大は、単に算定患者が増えるという話ではありません。

高齢の慢性疾患患者さんを、医療だけでなく介護も含めて継続的に支えることが、かかりつけ医機能として評価される方向に進んでいるということです。

自院の患者さんの生活背景を把握することは、診療の質にもつながります。

まずは、患者リストの見直しと、介護情報を確認する院内フローづくりから始めていただきたいと思います。

→目次に戻る