医療業界全体でデータの収集と活用がますます重要視されています。特にマイナンバー制度の導入により、医療データの一元管理と活用が促進されていますが、そうでなくても、適切なデータ管理は患者の治療の質向上や業務効率の改善に大きく貢献します。
なぜデータが重要視されるかといえば、データを収集し分析することで、業務の効率化が進みます。業務の効率化とは生産性を上げることになるということに注目すべきでしょう。診療所内の業務フローをデータで可視化することで、無駄を排除し効率的な運営が可能となります。更に待ち時間の短縮やスタッフの負担軽減にもつながります。適切なデータ収集ができれば、データを用いて診療所全体のパフォーマンスを評価し、改善点を見つけ出すことができます。これにより、診療所全体のサービス向上、つまり生産性のアップが期待できます。
しかし、多くの診療所は、ITリテラシーが低く、厚労省が想定しているレベルのデータ収集が難しいのが現状です。DXという前に、パソコン操作にさえ慣れていない人が多いのです。現状のままではこの分野に強い施設とますます差が開いてしまうでしょう。まずはエクセルの使い方など基本的なITスキルの向上が必要ではないでしょうか。「そのうちやろう」と言っている段階ではないと危惧しています。
今年10月からマイナ保険証の利用実績に関する基準が設定されましたが、これは、診療報酬上の問題だけでなく、医療データの統合と活用を一層推進していくことへの伏線です。データの管理と活用が進んでいる医療機関はますます強くなり、そうではないところは衰弱していきます。まずは自院の職員教育を行い、データの適切な収集と管理が出きる体制を作り診療所の運営において活かせる環境整備が最優先だと思います。
村上 佳子 氏
M&Cパートナーコンサルティング代表取締役
メディカル21代表
一般社団法人 医療実務研究会 代表理事
医療法人 南凕会 顧問 社会福祉法人 景福会 評議員
㈱総合メディカル専任講師
公益社団法人 福岡県介護老人保健施設協会理事
病院医事課に12年勤務の後、㈱医療事務サービス入社。教育システム課にて講師及び派遣社員の教育。
現在はメディカル21代表として、総合病院から単科病院・診療所まで幅広くレセプト診断・減点・請求漏れ対策指導に従事する傍ら、一般社団法人医療実務研究会代表理事として各種セミナーを企画し、九州一円の80数会員の勉強会を開催し、医療事務職員のレベルアップ指導を行う。また、医療機関の顧問として医事課をはじめ経営に直結する指導を行っている。
2006年度より公益社団法人福岡県介護老人保健施設協会理事に就任。
2014年6月より公益社団法人全国老人保健施設協会社会保障制度委員会介護報酬部会会員として活動。