診療報酬専門研究員の能見です。今回は、療養担当規則の第12条(診療の一般的方針)についてご説明いたします。
第12条(診療の一般的方針)
第12条 保険医の診療は、一般に医師又は歯科医師として診療の必要があると認められる疾病又は負傷に対して、的確な診断をもととし、患者の健康の保持増進上妥当適切に行われなければならない。 |
保険診療は、医療保険の加入者からの保険料や国庫補助などで賄われているため、必要が認められない診療や妥当適切ではない診療報酬請求には支払うべきでないとされています。
健康保険で診療を受けられる病気やケガとは、医師が診療の必要性を認めた状態のものをいいます。よって、体に自覚症状などの異常がなかったり、日常生活に支障がなかったり、あるいは治療の必要性のない状態の場合、健康保険で受診できないことになっています。次のような場合は、健康保険の対象範囲外となります。(ただし、患者が症状を訴えて来院した場合であって、診察の結果異常が無かった場合は保険給付の対象となります。)
①業務上・通勤途上の病気やケガ
労働者災害補償保険(労災保険)扱い
②病気とみなされないもの(日常生活に支障のないもの)
いぼ、にきび、あざ、わきが等
※治療を必要とする症状があるものは除く
③回復の見込みのないもの
近視、遠視、乱視、斜視、色覚異常等
※視力に変調があるときは除く
④美容のための整形手術
隆鼻術、二重まぶたの手術等
※外傷、火傷処置のための整形手術は除く
⑤正常な妊娠および出産
※妊娠高血圧症候群、異常分娩などは除く
⑥経済的理由による人工妊娠中絶
※経済的理由以外の人工妊娠中絶は保険診療を受けられる場合もあり
⑦身体的機能に支障のない先天性疾患
小耳症、四肢奇形等
※美容のためでなく社会的通念上治療の必要がある場合は除く
⑧治療のためではないもの
健康診断、生活習慣病検査、人間ドック等
⑨予防接種、予防内服等、予防のためのもの
※感染の危険がある場合の破傷風、狂犬病、はしか、百日咳の予防は除く
⑩保険給付が制限される場合
健康保険制度の健全な運営を阻害することになるため、次のような場合は、保険給付の全部または一部が制限されます。
・故意の犯罪行為または故意に事故(病気・ケガ等)を起こしたとき
・国または公共団体の負担により公費負担医療を受けたとき
・正当な理由もなく療養に関する指示に従わないとき
・詐欺その他の不正行為によって保険給付(現金給付)を受けるまたは受けようとしたとき
・少年院などに入れられたり監獄、留置場などに留置されたりしたとき
健康保険対象外の治療であるか否かは、問診及び医師の判断にも委ねられることとなります。もし、保険対象外であることが疑われる場合は、返戻・査定の対象となります。また、的確な診断のためには必要な検査は当然行われるべきですが、その診断の根拠となる検査や画像診断等がなく、ただ病名付記のもと投薬等の治療が行われた場合、厚生局による指導対象となります。
能見 将志(のうみ まさし)
診療情報管理士。中小規模の病院に18年間勤務(最終経歴は医事課長)。 診療報酬改定、病棟再編等を担当。診療情報管理室の立ち上げからデータ提出加算の指導まで行う。