今月は、診療録と診療録の保管について説明致します。
1.診療録とは
診療録は、医師が患者に対して医療行為を実施し、その診療経過等を記録したものを言います。また、診療記録は、診療に関する諸記録として、処方箋、看護記録、手術記録、検査結果等を言います。よって、診療記録等は単なる医療従事者の備忘録ではなく、患者の疾病における記録であることを忘れてはいけません。また、医療事故等がもし発生した場合には、証拠書類となることから、遅滞なく記録し、改ざんしているとみなされないように作成しなければなりません。記載者の責任でもありますので、サインも求められます。記録する際には、上記でもあるように紙媒体であれば、鉛筆の使用を禁止し、ボールペン等の消えないようにしなければなりません。これらのことから、診療記録等においては、真正性と見読性が求められます。
診療録の記載責任として、医療機関の責任として、被保険者(患者)氏名、住所、連絡先、保険者記号番号、公費負担者番号、公費受給者番号等の項目を明記する必要があります。保険医の責任として、傷病名、開始日、終了日、転帰、既往症、主訴、経過等、処方、検査等を明確に記さなければなりません。また、医師以外においても、医師の指示を受けた職員や、記録後のサインが必要です。
2.診療録の保管
診療録は、完結の日から最低5年間の保存が必要です。検査記録やエックス線写真、診療日誌等の保存義務は3年間と定められています。しかし、医療事故に関する時効は、最高20年であることから、これらのことも考慮し保存しておくことが望ましいと考えます。
電子カルテを導入し以前までの紙カルテをスキャナ等で電子化することは可能です。その場合、紙カルテに法定上の保存義務はなくなりますが、破棄を義務付けるものではないため注意が必要です。
能見 将志(のうみ まさし)
診療情報管理士。中小規模の病院に18年間勤務(最終経歴は医事課長)。 診療報酬改定、病棟再編等を担当。診療情報管理室の立ち上げからデータ提出加算の指導まで行う。