医療MaaSとは?
医療MaaSとは、高倍率カメラや通信機器、高感度の聴診器など、診断に必要な機材を搭載した車両が、患者の自宅近くの交流センターなどを訪問し、オンラインで診療や健康相談を提供するサービスです。このようなサービスは、「医師の偏在」などの医療課題に対する解決策の一つとして注目されています。
医療MaaSの成長予測
政府の支援や企業の参画により、医療MaaSは今後急速に発展すると予測されており、2035年までに市場規模は167億円に拡大する見通しです。この成長の背景には、医師の偏在や地域の過疎化といった課題が影響しています。
実証実験の事例
2019年には、長野県で医師が同乗しない移動診療車による実証実験が初めて実施されました。この実験では、病院への移動が困難な車いす利用者などの高齢者を対象に、遠隔診療や遠隔服薬指導が提供され、多くの有益なデータが得られました。特に、月に1回の通院が限界だった高齢者が、通院の合間に医師に体調相談を行う機会が増えたことや、通院に必要だった家族の支援が減少した点が大きな成果でした。
医療MaaSの構築と課題
医療MaaSは、「車両を提供する企業」「医療機関」「遠隔診療システムを提供する企業」が連携して構築されています。現在も国内外で実証実験が行われ、そのノウハウが継続的に洗練されています。しかし、日本では触診ができないオンライン診療は「対面診療の補完」という認識が根強く、診療の時間管理が複雑になるという課題もあります。そのため、オンライン診療の普及率は約15%にとどまっており、イギリスの70%、アメリカの60%に比べて低い水準です。
今後の展望
「医療MaaS」という医療機関と患者をつなぐソリューションも、医療機関側の体制が整わなければ「仏造って魂入れず」の状況になってしまうかもしれません。地域包括ケアシステムという大きな視座で今後の進化をそれぞれが考えていく必要があります。
原田 和将
一般社団法人 アジア地域社会研究所 所属
介護現場での管理者としての経験を活かした職員研修、コーチングを中心に活動。コーチングはITベンチャーなど多岐にわたる業態で展開。国立大学での「AIを活用した介護職員の行動分析」の実験管理も行っており、様々な情報を元にした多角的な支援を行う。