次なる課題と業務改善の取り組み
村上佳子: 前回のインタビューでは、業務の効率化や人材育成に力を入れていることについてお話を伺いましたが、どんな風に業務の効率化をしたのでしょうか?
語り手/姫嶋 正治氏
医療法人 聡明会 児玉病院 統括マネージャー
聞き手/村上 佳子 氏
M&Cパートナーコンサルティング代表取締役
姫嶋さん:一覧表を作成し、誰がどの業務を担当しているのかを明確にしました。以前は「誰かが休むとその業務ができない」というように、その人しかできない配置で進めていたようですが、それでは持続可能ではありませんよね。
村上:確かにそういった問題、よくありますよね。どうやって解決したのですか?
姫嶋さん:単純な話なのですが、名前と業務を照らし合わせて一覧表にし、誰がどの業務を担当できるかを見える化しました。いわゆる業務の洗い出し作業です。こうして一つひとつを確認してみると、実際にはそれほど業務量が多くないことが分かってきました。そうなると次の課題が見えますよね。一人一人の負荷は高くないのに残業が発生するのはなぜだろうか。どこに課題があるのか。そういう手順でやりました。
村上:本当に一つひとつの業務を丁寧に見直したのですね。でも、姫嶋さんの場合、前の職場があるから比較ができてよかったのかしら?新しい職場に入ると、「なぜこの業務をこんな風にやってるのか」と気づく点が多いのでは?
姫嶋さん:そうですね。それは実際によくありましたし、外部からスタッフが来る良い点だと思います。長くそこにいると、そこにある業務が当たり前になってしまい、内部の人には非効率さが見えにくくなります。しかし、私のように外から来た者には「これは非合理的な手配だな」と感じる点が見えてきますので、改善の余地がありますね。
村上:具体的に教えてください。
姫嶋さん:こちらの病院は、医事課が減点に対しておおらかすぎる面がありました。減点を減点のままにしておくような。減点されているのかについてほとんど調査しないんですね。
村上:それはもったいない。
姫嶋さん:そうなのです。楽をしているとか悪気があるのではなく、そういうものだと考えていたようです。それで医事課は減点されたままの金額を経理に渡してしまう。すると経理は、その金額がそのまま収入になると考えて処理してしまうわけです。このようなやり方だと、毎月の収支が現状と変わってしまい、年度末の決算時に誤差が出てしまいます。これだと予算が立てられません。
村上:財務担当の方から何か言われたりしないんでしょうか。
姫嶋さん:おそらく前提が違うんだと思います。医事課が出した金額を確定された収入だと考え、そこから処理を進めているようです。
村上:なるほど、それは確かにもったいない話ですね。
姫嶋さん:全体の流れが分かっていれば単純な話ですが、医業経営を大局的な見地で見たことがない場合、どうしても目の前の処理をするだけで完結しますね。そうなると、個別の処理が断片的になり、結果的に収入面で大きな損失につながることがあるのだと思います。
村上:再請求は非常に重要ですからね。返戻もありますし。
姫嶋さん:特に入院では数百万円単位で違ってくることもあります。これは機会損失だと思います。
村上:私たちからすると基本的すぎて、「どうしてそれが改善できないの」って思ってしまうけれど。
姫嶋さん:そもそも意味が理解できていないのだと思います。医業経営は2か月遅れで清算となりますので、やっぱり、感覚的に理解しにくいところがあるようですね。ですから、それをまずわかってもらわないといけませんから、Excelでデータを打ち出して照合したりして流れをつかんでもらえるように努力しました。
村上:大変ですね。
姫嶋さん:大変ですが見逃せないです。理解してもらうまでに時間がかかりました。ですが、ここは非常に重要な部分ですので、丁寧に取り組んでいます。結果的に収支もだいぶ落ち着いてきました。軌道に乗せるまで大変ですが、病院の収入において重要なポイントなので飛ばすわけにいかない業務改善の一つでした。
村上:やはり全体を把握している人がいることは重要ですね。
姫嶋さん:本当にそう思います。
村上:いろいろなことに取り組んでいますね。
姫嶋さん:はい、さまざまなことに取り組んでいます。少しやりすぎているかもしれませんが、若い人たちに学び、活躍してもらいたいと考えていますので、そのために経営基盤を盤石にすることは始発点です。
村上:若い職員が多いんですか?
姫嶋さん:そうですね、40歳前後の職員が多いです。入職して10年以内の人が多く、看護師もどんどん入ってきています。口コミも多く、楽しい職場だという評判から知り合いを紹介してくれることもよくあります。
村上:それは素晴らしいことですね。
姫嶋さん:当院の魅力ですね。
次回はぜひその話も詳しく聞かせてください。