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医師の宿日直について

宿日直に関しては、特定の診療科や医師に過度な負担がかからないように体制の整備が必要です。静岡県磐田市の磐田市立総合病院では、医師の働き方改革を進めるために完全オンコール制を導入しています。特に消化器内科の取り組みが注目されています。消化器内科は急性重症疾患が多く、がんの合併症や終末期の症例、内視鏡処置後の患者が多いため、急変対応が頻繁に発生し、医師が休日でも気が休まらない状況が心理的負担となっていました。
 磐田市立総合病院では、この問題に対処するため、「完全主治医制の廃止」と「休日・入院診療における完全オンコール制」を導入し、従来のように特定の医師だけが患者対応を行う体制を見直しました。それに伴い、どの医師が対応しても同等の医療水準を維持できるよう、医師間で患者の情報を共有するオペレーション体制を構築しています。
 また、磐田市立総合病院では、勤務実態の調査と効率化を進めるため、他の病院がどのような勤怠管理システムを導入しているのか参考情報を集め、自院に最適なシステムを選定し、労働環境の改善を進めました。
 このような完全オンコール体制と勤怠システムの導入といった改善計画の結果、有給休暇の取得日数は増加し、2018年には一人当たり月0.55日だった取得日数が、2021年には1.25日まで増加しました。さらに、消化器内科における時間外労働時間も、2018年の一人当たり月37.1時間から、2021年には31.6時間に減少することに成功しています。「医師の労働時間を適切に把握できるようになった」「いつコールが鳴るか分からない緊張から解放された」といったポジティブな声も上がっています。
 静岡県は全国平均と比べて医師数が少ない地域であり、このような労働環境改善の取り組みが、医師の確保につながる重要な要素となっています。病院内の環境を大幅に改善するためには、明確な目標設定と綿密な計画が必要です。磐田市立総合病院のように、他施設の成功事例を調査し、自院に適したモデルを構築し、KPIを設定してPDCAサイクルを回すことで、効率的な改革を実現できるといえるでしょう。

 

原田 和将

一般社団法人 アジア地域社会研究所 所属
介護現場での管理者としての経験を活かした職員研修、コーチングを中心に活動。コーチングはITベンチャーなど多岐にわたる業態で展開。国立大学での「AIを活用した介護職員の行動分析」の実験管理も行っており、様々な情報を元にした多角的な支援を行う。