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他業種から医療界への挑戦 – 浦上誠さんの事務長としての道のり

医療法人や社会福祉法人の事務長に役立つ情報を集めたサイトである『 事務長ねっと 』。

今月から3回にわたり、M&Cパートナーコンサルティングの代表の村上さまに事務長のインタビューをしていただきます。今回は、他業種からクリニックの事務長に転身された浦上誠さん。浦上さんは、たった7名でスタートしたクリニックを100近くの雇用を持つクリニックに成長させた方です。

語り手/浦上 誠氏

NC・Cブレイン 代表/診療所及び介護事業所の開業支援、経営改善の提案、幹部・スタッフ教育、講演・執筆活動を行なう。特に在宅医療や介護事業所の経営改善や運営支援を得意とし、診療所や介護事業所の看護師や介護福祉士等を中心としたスタッフ教育は、現場に即した解説が多く、分かりやすいと定評がある。

公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会 熊本県支部長、社会福祉士、介護支援専門員、熊本県医療勤務環境改善支援センター 医業経営アドバイザー

村上佳子氏

聞き手/村上 佳子 氏

M&Cパートナーコンサルティング代表取締役

村上: 浦上さん、そもそもどのような経緯で事務長に就任されたのですか? 

 

浦上: 院長から「自分は医師だから医療に専念したい。医業は君にやって欲しい」と頼まれたんです。それがきっかけでした。 

 

村上: それは珍しいパターンですね。 

 

浦上: ええ、そうかもしれません。多くの場合、新卒で入社するか、金融業界や製薬業界、県庁、公共機関、保健所などから転職するケースが多いですから。でも、私のような背景だからこそ、業界の常識に囚われず、柔軟に対応できたと思います。 

 

村上: この業界に入られたのは何歳のときですか? 

 

浦上: 33歳のときです。ちょうどキャリアの成長期で、新しいことに挑戦するのに最適な時期でしたね。 

 

村上: それまではどのような職に就いていたんですか? 

 

浦上: 中小企業を対象にした経営コンサルタント会社にいました。 

 

村上: 経営には詳しかったんですね! 

 

浦上: そうですが、医療業界の特異性には驚きましたね。一般の業界の常識が全く通用しない!特に、患者さんに対する看護師の態度にはびっくりしました。友達感覚というか…。顧客にそんな態度をするなんて、他業界とは大きく異なっていました。これはマナー研修が必要だと思いすぐにやりましたよ! 

 

村上: 医療ってそういうところありますよね。他の業界で働いたことがないから。 

 

浦上: そう。でもこちらは、医療とはこういうものだ、というイメージがないですから、院長の期待にも答えたいし、一生懸命研修しましたよ。けれど、これもびっくりですが、研修会を始めた当初は、全く受け入れられませんでした。そればかりか、あまりうるさく言うと、すぐに辞めるっていうんですね。この業界は、今もそうですが人材不足が深刻です。看護師さんは、どこでも仕事が見つかりますから、売り手史上なんですよね。そこで、「ああこれはやり方を変えないと」と思いました。 

 

村上: 具体的にはどのように変えたのですか? 

 

浦上: 一方的な伝達から、参加型のアプローチに切り替えました。例えば、経営を教えるにしても、経営とは、というような言い方ではなくって、自分ごとにとらえてもらえるような工夫をしました。 

 

村上: 経営を自分ごとに? 

 

浦上:経営を家計簿に例えて考えてもらうやり方を採用しました。経営について意見を求めると、なかなか反応が得られませんが、家計をテーマにすると、スタッフからの意見が出やすくなりました。 

 

村上: 家計簿を使うとは面白いアイデアですね。 

 

浦上: はい、医療業界は昔から女性が多いので「家計簿」は身近なテーマだろうなと思ったのです。おもちゃのお金を使って、銀行の封筒に10万円入れてね。「これを皆さんならどう使いますか?」という形で考えていただきましたよ。 

 

村上: その方法は受け入れられましたか? 

 

浦上:経営の基本を理解してもらうことができました。看護師たちに「数字を勉強しましょう」と言っても、「専門じゃないのに」と反発が起き意見は出ませんが、これは好評でした。経営がわかることが基本ですからね。 

 

村上:浦上さんの経験は、私にとっても医療業界における経営のあり方を再考するきっかけになりました。従来の枠組みにとらわれないって大事ですね。難しいことを言ってもスタッフの参加と理解が得られなければ意味がないですものね。次回も楽しみです。