クリニック経営において、重要なのが「接遇力」です。厚生労働省の受療行動調査によると、外来患者の満足度項目で上位を占めるのは「医師以外の病院スタッフの対応」「医師との対話」であり、接遇が患者満足度に直結することが明らかになっています。
接遇5原則で基盤を固める
医療接遇の基本は「表情・あいさつ・言葉遣い・身だしなみ・態度」の5原則です。しかし、一般的なサービス業の接客とは根本的に異なります。患者は不安や痛みを抱えて来院するため、「対等な目線での寄り添い」が求められます。事務長として、この違いをスタッフ全員に浸透させることが第一歩です。
特に重要なのは「傾聴の姿勢」です。患者の約2割が「励ましやいたわり、温かみのある態度」に不満を感じているという厚生労働省の調査結果は、現在も変わらず医療現場の課題として残っています。
データで検証する接遇効果
接遇研修を実施したクリニックでは、患者満足度が向上し、クレームが減少するという実績が報告されています。さらに、スタッフの定着率改善も確認されており、採用コストの削減効果も期待できます。
事務長主導の実践的教育システム
成功するクリニックの事務長は、以下の3段階で接遇向上に取り組んでいます:
第1段階:標準化 接遇マニュアルの策定と、スタッフ個別の目標設定を行います。「来院患者20人に対して1人のスタッフ」などという適正配置を維持しながら、一貫した対応品質を確保することが重要です。
第2段階:定期的な検証 月1回の接遇レベルチェックと、患者満足度調査を実施します。自己評価と他者評価を組み合わせることで、客観的な改善点を発見できます。
第3段階:継続的改善 外部講師による専門研修の導入と、日常的なOJTを組み合わせます。特に新人スタッフには、入職3か月以内の集中教育が効果的です。
投資戦略
接遇向上への投資は、確実なリターンを生み出します。患者満足度の向上により、リピート率が改善し、口コミによる新規患者獲得も期待できます。また、スタッフのモチベーション向上により、離職率が下がることで、採用・教育コストの削減効果も生まれます。
今すぐ実行すべきアクション
事務長として、まず現状の患者満足度を数値化し、改善目標を設定してください。そして、スタッフ一人ひとりの接遇レベルを客観的に評価し、個別の教育計画を立案することが成功の鍵となります。
接遇力は一朝一夕では向上しません。しかし、継続的な取り組みにより、必ず患者満足度と経営指標の両方で成果を実感できるはずです。