過疎地のクライアントを訪問すると、地域医療の現状について深く考えさせられます。
入院している患者層をみると高齢者ばかり。外来をみてもそう。つまり地域中がそうなのですね。となると、5年後どうなっているのでしょうか。病院にベッドがあっても入院する人がいません。地域医療における長期計画を考える上での大きな課題です。現状では、30年という長期計画を立てるのは非現実的で、せいぜい10年先を見据えるのがやっとです。
経済的制約と非効率なシステム
そのような状況ですから、資金繰りが苦しくて銀行に相談してもなかなか難しい。新しい建物の建設を考えるなんてもってのほかですよね。病院経営をとりまく状況は厳しいと言わざるをえません。ただ、外部環境だけが悪いのかしら、と思うこともあるのです。経営が苦しい病院を観察すると、運営面に非効率な面が多く見受けられます。例えば、まだ紙カルテの使用していて、電子カルテへの移行も「あと2,3年」と先送りされていたり。電子カルテに移行できない事情は様々でしょうが、理由の一つに紙カルテは医師にとって使い慣れていているのでしょう。しかし、紙カルテは事務作業が非効率の上、医師の要求に対応しなければならない現状が続いており、事務の手間がかかりすぎています。
技術の活用
AIなどの技術を活用して、これらの非効率を改善する提案をしていますが、実現にはまだ時間がかかりそうです。医療の現場では新しい技術の導入に慎重な姿勢が強く、変化を受け入れる準備が整っていないのが現実です。非常にもったいないなと考えます。
提案と展望
これらの問題に対処するためには、もっと柔軟な発想と積極的な技術導入が求められます。地域医療の未来を考える際には、持続可能で効率的なシステムを構築することが不可欠です。外部環境はたしかに20年前と比べると厳しくなっています。しかし、それにあわせて制度も変わってきているわけです。私は、「やれることをやっていますか?」と言いたくなってしまいます。たとえば、地域コミュニティとの連携を強化し、医療サービスの質を高めながら、コストを抑える方法に全て挑戦すれば、医療は他のサービス業より経営面で恵まれている場合もあるのです。とにかく模索することが重要です。今は、オンラインミーティングなどを活用して、私達のようなコンサルタントと楽につながることもできるようになりました。現状維持を良しとせず、未来の地域に貢献していくためにも変化を恐れないでいただきたいです。
村上 佳子 氏
M&Cパートナーコンサルティング代表取締役
メディカル21代表
一般社団法人 医療実務研究会 代表理事
医療法人 南凕会 顧問 社会福祉法人 景福会 評議員
㈱総合メディカル専任講師
公益社団法人 福岡県介護老人保健施設協会理事
病院医事課に12年勤務の後、㈱医療事務サービス入社。教育システム課にて講師及び派遣社員の教育。
現在はメディカル21代表として、総合病院から単科病院・診療所まで幅広くレセプト診断・減点・請求漏れ対策指導に従事する傍ら、一般社団法人医療実務研究会代表理事として各種セミナーを企画し、九州一円の80数会員の勉強会を開催し、医療事務職員のレベルアップ指導を行う。また、医療機関の顧問として医事課をはじめ経営に直結する指導を行っている。
2006年度より公益社団法人福岡県介護老人保健施設協会理事に就任。
2014年6月より公益社団法人全国老人保健施設協会社会保障制度委員会介護報酬部会会員として活動。