引き続き療養担当規則第20条5の(手術及び処置)にかかる内容について、ご説明いたします。
第20条(診療の具体的方針)
5 手術及び処置 イ 手術は、必要があると認められる場合に行う。 ロ 処置は、必要の程度において行う。 |
2)処置について(算定上の留意点)
①処置に用いる衛生材料について
処置に当たって通常使用される包帯(頭部・頸部・躯幹等固定用伸縮性包帯を含む)、ガーゼ等衛生材料の費用は、所定点数に含まれており、別に算定できません。また、処置に用いる衛生材料を患者に持参させ、処方箋により投与するなど患者の自己負担とすることは認められていません。
②創傷処置、皮膚科軟膏処置、熱傷処置、重度褥瘡処置の範囲について
これらの処置は、処置の範囲の広さによって点数が異なります。その処置の範囲とは、「傷の大きさではなく、包帯等で被覆すべき創傷面の広さ、又は軟膏処置を行うべき広さ」と定義されています。もちろん、処置の大きさによって衛生材料等を使用する量も多くなり、材料の費用が増えるので当然のことですが、医事課だけでは処置の範囲は判断できません。しかし、多くの医療機関で処置を行う医師や看護職員が、このルールを知らずに算定が行われています(傷の大きさと解釈されているケースが多い)。つまり、算定誤りが日常的に起こっていることになります。医事課は、医師や看護職員に対して勉強会を企画し、理解を統一させることが必要です。
また、同一疾病またはこれに起因する病変に対して創傷処置、皮膚科軟膏処置等が行われた場合は、それぞれの部位の処置面積を合算し、その合算した広さをいずれかの処置にかかる範囲の区分に照らして算定します。この合算ルールも併せて現場へ周知することも必要です。
③重度褥瘡処置について
J000 創傷処置 | J001-4 重度褥瘡処置(1日につき) |
皮下組織に至る褥瘡(筋肉、骨等に至る褥瘡を含む)(DESIGN-R分類D3、D4及びD5)に対して褥瘡処置を行った場合は、重度褥瘡処置として、初回の処置を行った日から起算して2か月は算定ができます。こちらについても②と同様に、看護職員がこの算定ルールを把握してないことで、現場での算定漏れが生じる可能性もあります。なお、療養病棟入院基本料では、創傷処置の費用は包括とされていますが、重度褥瘡処置は出来高算定となっています。こちらについても、医事課と病棟看護職員との認識の共有化が必要です。
なお、重度褥瘡処置には、「1日につき」という記載があるため、1日に複数回の処置を行ったとしても1日1回のみの算定となりますが、創傷処置は、「1日につき」という記載がないため、1日複数回の算定が可能だと考えられます。また、熱傷処置においても「1日につき」という記載はありません。複数回の処置を行った旨をカルテへ記載がなければ算定漏れを起こすため、現場への周知がこちらも必要です。
能見 将志(のうみ まさし)
診療情報管理士。中小規模の病院に18年間勤務(最終経歴は医事課長)。 診療報酬改定、病棟再編等を担当。診療情報管理室の立ち上げからデータ提出加算の指導まで行う。