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福祉用具貸与品目について

2025年6月11日、厚生労働省は介護保険における福祉用具貸与の見直し方針を明らかにしました。今回の改正案では、GPSやセンサーなど通信機能を搭載した福祉用具の給付対象が広がる見込みです。たとえば車いすや歩行器に、リアルタイムで位置情報や異常を通知する機能があれば、認知症高齢者のご家族や介護者にとっては大きな安心材料となるでしょう。これまでは、通信機能が物理的に分離可能な機器に限定するという厳格なルールがありましたが、時代は進み、IoT機器やスマートフォンが当たり前になった今、そうした「分離性」よりも「実効性」が重視されつつあります。この方針転換は、現場のニーズに応えるものとして大きく評価できます。

 また、これは単なる制度の改正にとどまらず、「地域包括ケアシステムの進化形」として捉えるべき変化です。ICTやIoTの力を活用することで、在宅や地域での生活をより安全かつ継続可能に支える基盤が整い始めています。認知症高齢者の徘徊を早期にキャッチし、家族や多職種チームが迅速に対応できる仕組みは、新しい地域包括ケアシステムの象徴と言えるでしょう。

 とはいえ、通信料や端末のサブスクリプション費用などは引き続き給付対象外となります。つまり「便利な道具を保険で借りられるようにはなるが、それを使うための環境整備は自己負担」という線引きは維持されます。病院や地域包括支援センターの立場としては、制度の隙間をどう支援するか、従来以上に地域資源の調整や制度外サービスとの連携が求められる場面が増えてきます。

 福祉用具は単なる補助用具ではなく、テクノロジーを活用して生活全体を支える「ライフデザインの一部」へと進化しつつあります。こうした制度の変化をチャンスと捉え、医療・介護の現場がより柔軟かつ包括的な支援に向かうことが期待されます。

 

原田 和将

一般社団法人 アジア地域社会研究所 所属
介護現場での管理者としての経験を活かした職員研修、コーチングを中心に活動。コーチングはITベンチャーなど多岐にわたる業態で展開。国立大学での「AIを活用した介護職員の行動分析」の実験管理も行っており、様々な情報を元にした多角的な支援を行う。