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HOSPITALITY 〜長先生の接遇レッスン〜 VOL.82「「出来ない」理由を「できる」にかえる魔法の言葉~②」

前回は、現場でよく耳にする「できない」という言葉が、窓口対応や部署間の依頼の場面でどのように表れているのかを見てきました。
今回はその続きとして、「できない理由を考えること」そのものの意味を整理し、会話のスタート地点をどう変えていけるのかを確認していきます。

「できない探し」は、悪者ではない
ここで一つ、整理しておきたいことがあります。
「できない理由を考えること」自体が、悪いわけではないということです。

医療現場では
・ミスを防ぐ
・リスクを予測する
・患者さんの安全を守る
・・・など、様々なことを考えて業務に当たる必要があります。
このためには、「慎重に考える力」「問題点を洗い出す力」が不可欠です。
つまり、“できない理由を探す”のは、責任感の裏返しでもあるのです。

ただし,それが会話のスタート地点になってしまうと、話は変わってきますよね。

「できない」が続く現場で起きていること
「できない!」と言いたくなる時の状況をここで少し考えてみましょう。
「どうせ無理」「言っても変わらない」
「また指摘されるだけだろう」
「また雑用をさせられる!」
こうした空気が少しずつ積み重なると、
現場ではどのようなことが起きてしまうでしょうか?
皆さんはどのように感じますか?

・新しい提案が出なくなる  ⇒「どうせ提案してもなぁ・・・」
・意見を言う人が限られてくる ⇒「いうだけ無駄だよねぇ・・・」
・接遇が“気持ち”ではなく“作業”になる ⇒「とりあえず笑顔つくろう」

これらの反応は、やる気がないからではありません。消極的なわけでもありません。協力しないわけでもありません。
「否定される前に、自分を守ろうとする反応」とも言えます。

その結果、モチベーションは静かに、気づかれないまま下がっていくのです。

視点を変える:「どうすればできるか」を一緒に考える
ここで大切になるのが、「問いかけ方」、「声のかけ方」です。
「できる/できない」という二択ではなく、
「どこならできそうか」「どんなことならできるか」という問いに、変えてみては如何でしょうか。

<エピソードからの考察>
先ほどのクリニックで、事務長は言い方を少し変えてみました。
すると周りの反応も変わってきます。

■事例①午前中の忙しい窓口での接遇~その後は?
接遇改善の話し合いの中で、「患者さんへの声掛けをもう一歩丁寧に」という
場面で、できない!という反応が返ってきていました。
何故、「患者さんへの声掛け」をもう一歩丁寧にしていきたい、と考えたのでしょうか?ここがとても大事になってきます。

もしかしたら、「何となく機械的だなあ」と感じていたのかもしれません。
「具合が悪そうな方には、少し注意を向けてほしい」や「忙しい中にも、相手を想いを感じ取ってほしい」と感じていたのかもしれません。

「全部を一度に変えるのは難しいですよね」
「でも、今より“ほんの一言”増やせる場面って、どこかにありそうですか?」

すると、受付スタッフの一人が、少し考えてからこう答えました。
「混雑していない時間帯なら、最後に一言添えられるかもしれません」
別のスタッフも続きます。
「常連さんなら、名前を呼ぶ余裕はあるかも・・・」
「最後に、お大事に、気を付けてっていうことはできるかも・・・」

完璧な答えではありません。
けれど、この瞬間、“考える空気”が生まれました。
「どうすればできるか」とは、
正解を出すことではなく、一緒に考える姿勢そのものなのです。

■事例②看護師さんからの対応依頼~
さて、この事例は、私も実際に感じていました。
「やらされる感」満載、しかも、「やってあげてるのに・・・」となると、面倒な作業を押し付けられているような感覚に陥ってしまいます。

「やれやれって忙しいのに!」「あれもこれもって言われてもできません!」

看護師さんの仕事・・・と分類されている仕事は、それぞれの医療機関で違い幅があります。そんな事務作業までしてくれているの?ということもありますし、いやいや、それは看護師さんお願いしますよ…と思う内容もあります。

それでも、何らかの理由があって「お願いできないかな」「事務さんにやってほしい」と思っているのだと思います。その理由を確認してみませんか?

私は2つの基準を作って整理していました。
ひとつは、専門職が業としてやる仕事か?・・・ということです。
ふたつめは、依頼されるということは困っているのだから、どうやったらできるのかをお互いに考えてみよう・・・ということです。

例えば、患者さんの診断や治療を行うことは医師の業務になりますし、検査台紙に貼ることや物品管理は看護師の資格がなくてもできます。そういう視点で考えていくと、代わりにやってくれたことも「ありがとう」と感謝の言葉が出てくるでしょうし、面倒だからやっといて!ということもなくなると思います。

求められていることは「今は、できないことかもしれないけど、どうしたらできるのか?」と、考えることも必要ではないでしょうか?

次回は、「NGな声掛け」と「前向きな声掛け」を整理しながら、管理者・事務長として現場にどう関わることが次の一歩につながるのかを確認していきます。

長 幸美(ちょう ゆきみ)

(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。