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HOSPITALITY 〜長先生の接遇レッスン〜 VOL.37「NO」を伝えるには

寄り添うとはビジネスシーンでは、「心情的に歩み寄ること」。

医療機関では受診の時のルールや入院生活におけるルールなど、「できない」ことを伝える場面も多いですよね。新型コロナウイルス感染症が5類に変わり、多くなってきたのが「マスクの問題」。マスク着用については、厚生労働省からも個人の判断にゆだねる・・・とされ、街中でもマスクをされない方が多くなってきました。

 

医療機関では感染対策のため、待合室内でのマスク着用を求めているところも多いですし、多くの医療機関では、発熱患者さんは外から電話をもらい、現在でも動線分離が行われています。これは新型コロナウイルスの感染力が高いことと、インフルエンザ流行期である冬場に備えての院内感染防止策だと思います。

 

先日訪問した医療機関でこんなことがありました。入り口には「発熱がある方はお電話ください」「インターホンを押してください」と張り紙をされていたのですが、よほど具合が悪かったのか、おでこに熱さまシートを張って いる方がとことこ中に入ってこられました。 さあ・・・こういったときに皆さんはどのよう に対応されますか?

この医療機関の事務職員さんは、熱さまシートを見た瞬間、ロビーに飛び出し、熱がある・・・と聞いたとたん、「え?表にも熱があったら電話してくださいって書いてましたよね!」「マスクはしてもらわないと困ります!「電話をかけてください!」と言ってその方を入り口の外まで半ば押し戻すように案内し、携帯電話から電話をかけさせる・・・ということをされていました。 

まあ、発熱患者さんでインフルエンザやコロナ感染症の方が多いので、受付もピリピリして、焦ったのかもしれませんが・・・ほかに対応できなかったのでしょうか? 

 

「発熱外来を受診したい」と電話がかかってくれば、その場で受診方法の案内ができるでしょうが、来院された患者さんに対し、どう対応するか・・・どのように伝えていくか、というところがなかなか難しい課題になってきます。 

「うちはこういうルールですから!」と言ってしまえばそれまでなのですが、具合が悪い方と入り口付近で押し問答・・・というのはあまりよろしくありません。受付にいきなり来られた患者対応については、感染対策をしたうえで、事前にどう対応するか考えておかれることをお勧めします。 

■一般患者さんと待合室を分ける 

医療機関によっては、車の中で待機してもらい、その場で診療を行っている医療機関もあります。風除室脇につい立てをして待合を作っている医療機関もあります。また、待合室の一角をつい立てで区切り、へパフィルター付きの空気清浄機を置いておられる医療機関もあります。 

 

■マスクの着用と手指消毒の徹底 

責がある患者さんにマスクを二重にしてもらうように1枚渡しておられる医療機関もありました。あまりエビデンスはないようですが、布マスクやウレタンマスクの場合、布マスクやウレタンマスクの下に不織布マスクをつけることで飛沫のブロック効果が高まるという効果が期待できるようです。しかしながら、不織布マスクを顔に密着させるように正しくつけるほうが、効果が高いといわれています。風邪症状がある方には、マスクをしてきてください、と患者さんを押し戻すのではなく、マスクを渡して適切に着用してもらうことも必要だと思います。 

 

■案内表示を見直す 

冒頭でお話しした医療機関では、もう半年以上掲示しているのではないかというような、焼けて文字が薄くなっているような掲示をされたままでした。 

例えば、黄色い厚紙(ケント紙)などに太めのゴシック体で大きな文字で張り直す、そして出来れば駐車場の車からも見えるように掲示する場所を工夫してもらいました。その他、外を歩いている方からも見えるように掲示するなど、見直してみられては如何でしょうか? 

 

感染症の分類で、新型コロナウイルス感染症が5類に変更になり、市民の皆さんもホッとして感染対策が甘くなっているところもあるとおもわれます。しかし、医療機関の皆さんが感染してしまうと、診療ができなくなるなど、大変なことになってしまいます。医療は生活の中に欠かせない大事なインフラです。医療機関からも感染対策や感染症の診療について、医院の方針を明確に示していく時期かもしれません。 

長 幸美(ちょう ゆきみ)

(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。