日々、さまざまな医療機関を訪れるなかで、私はいつも「空間が持つ力」を感じています。たとえば、新築で最新設備が整ったクリニックであっても、掲示物が乱雑に貼られ、パンフレットにうっすら埃が積もっていると、どこか落ち着かない印象を受けることがあります。
一方、築年数が経っていても、床が磨かれ、掲示物がきれいに整えられているクリニックでは、「ああ、ここなら安心できそうだな」と感じるのです。
皆さんも、そんな経験はありませんか?
――「新患が減ってきた」「競合クリニックが増えている」――そんな悩みを抱えたとき、診療内容やサービスを見直すのと同時に、空間の印象=“目に見える信頼感”にも注目してみることをおすすめします。
◆ “選ばれる理由”は「空間から感じる安心感”
患者さんが初めてクリニックを訪れたとき、まず目にするのは診療の内容ではなく、受付や待合室、トイレなどの空間です。
掲示物の整理状態や床の清掃具合、トイレットペーパーの補充、空気感――そのひとつひとつが、患者さんに「ここは安心できる場所かどうか」の判断材料となります。
「物が多すぎてごちゃごちゃしている」
「掲示が多すぎて見づらい」
「トイレの補充がされておらず、困った」
こうした小さな“引っかかり”が積み重なると、患者さんの印象は「また来たい」ではなく、「次は別のところにしてみよう」へと傾いてしまうかもしれません。
逆に、シンプルで清潔な空間、見やすく更新された掲示、五感に配慮された空気感は、「感染対策もしっかりしていそう」「ここなら大丈夫」と、信頼を育てる要素になります。
次回では、今日からできる!院内美化と空間見直しの工夫について、具体的な取り組みを詳しくご紹介します。お楽しみに

長 幸美(ちょう ゆきみ)
(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。
