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入退院支援「退院が決まってから、では遅い?」――病棟・地域連携室・医事課でつなぐ実務チェックリスト

解説:M&Cパートナーコンサルティング代表 村上佳子

作成日:2026年11月5日
本文の情報確認時点:2026年11月5日

※本稿は、主に入退院支援加算1・2に関わる実務を取り上げます。

■ 「そろそろ退院できますね」の前に、確認しておきたいこと

「治療は順調なので、来週あたり退院できそうです」

主治医からそう言われて、ご家族に連絡したところ、「今の状態では、自宅で介護するのは難しいです」と返事があった。そこから介護サービスや退院先の調整が始まり、病棟も地域連携室も慌ただしくなる――。

皆さんの病院でも、こうした場面はないでしょうか。

もちろん、入院後に病状が変わり、当初の予定どおりに進まないことはあります。ただ、入院時から分かっていた生活上の課題が、退院間際まで共有されていなかったのであれば、業務の流れを見直す余地があります。

入退院支援で大切なのは、患者さんの治療と並行して、退院後の暮らしを考えることです。「退院先を探してください」と地域連携室に依頼する前から、病棟で気づけること、確認できることがあるんですね。

今回は、その情報を病棟・地域連携室・医事課でどうつなぐか、順番に確認していきましょう。

マンガで確認する入退院支援

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■ 1.入院時は「誰と住んでいるか」の、もう一歩先まで

入院時の情報収集では、同居家族や緊急連絡先を確認すると思います。ただ、「家族あり」「連絡先あり」だけで、退院後の支援が整っていると判断していないでしょうか。

例えば、ご夫婦で暮らしていても、配偶者も介護を必要としているかもしれません。お子さんが近くに住んでいても、仕事の都合で日中は支援できないこともあります。

ですから、確認したいのは、家族の有無に加えて、実際に、誰が、どのような支援をできるのかということです。

次のように、生活の場面を具体的に聞いてみてください。

確認すること 聞き取りの例
入院前の生活 食事、移動、排泄、服薬は、ご自身でできていましたか
家族等の支援 普段は誰が手伝っていますか。日中や夜間も対応できますか
利用中のサービス ケアマネジャーや訪問看護、通所サービスとのつながりはありますか
住まいの状況 階段や段差、トイレまでの移動で困ることはありませんか
本人の希望 退院後は、どこで、どのように暮らしたいですか

これは、院内の聞き取りを具体化するための例です。すべてがそのまま診療報酬上の必須項目というわけではありません。

患者さんが話せる範囲で確認し、必要に応じて、ご家族や入院前から関わっている支援者の情報を合わせていきましょう。

■ 2.令和8年度改定では、介護認定と家族への連絡にも目を向ける

令和8年度改定で確認しておきたいのが、退院困難な要因の見直しです。

介護認定については、未申請の場合に加え、現在の認定区分とは異なる区分に該当する疑いがあるのに、変更申請がされていない場合も対象に含まれました。対象となる年齢・特定疾病の条件もありますので、通知と合わせて確認してください。

「介護認定は受けています」と聞いたら、そこで確認を終えるのではなく、「今の身体状況に合った認定になっているだろうか」と考えることが必要です。

また、意思決定支援や退院後の生活調整に当たって、家族・親族との連絡が困難な場合も、退院困難な要因に追加されています。[1]

ただし、これは単に「電話を一度かけたが、出なかった」という意味ではありません。

疑義解釈では、必要な照会などを行っても家族・親族を特定できない場合や、本人または家族・親族が相談を拒んでいる場合などが示されています。必要に応じて、家族以外で退院を支える方にもつなぐ対応が求められます。[2]

院内の確認票が以前のままであれば、この2点が拾える内容になっているか、見直してみてください。

■ 3.「地域連携室に依頼しました」で、情報を止めない

病棟で支援の必要性に気づいたら、次は担当者への引継ぎです。

ここで避けたいのが、「退院調整をお願いします」という依頼だけで終わってしまうことです。受け取る側は、何が課題で、何を優先すればよいのか分かりません。

例えば、次のように伝えると、支援を始めやすくなります。

「入院前はトイレまで歩けていましたが、現在は介助が必要です。ご本人は自宅退院を希望しています。配偶者は夜間の介助に不安があり、介護サービスの見直しが必要そうです」

課題、本人の希望、家族の状況が分かれば、誰に確認し、どの職種に相談するかが見えてきますよね。

実務では、依頼先だけでなく、受け取った担当者と次の対応予定まで共有することをおすすめします。担当者の休みや異動があっても、支援が止まりにくくなります。

■ 4.「7日以内」は、何をする期限なのか

算定を確認するときに気をつけたいのが、患者さんの抽出、話合い、計画作成への着手、カンファレンスを混同しないことです。

入退院支援加算1・2の主な時期は、次のように整理できます。

確認事項 入退院支援加算1 入退院支援加算2
退院困難な要因を有する患者の抽出 原則、入院後3日以内 原則、入院後7日以内
患者・家族との話合い イ・ロは原則7日以内、ハは原則14日以内 できるだけ早期
退院支援計画の作成への着手 入院後7日以内 入院後7日以内
所定の職員によるカンファレンス 入院後7日以内 できるだけ早期

※加算1のイは一般病棟入院基本料等、ロは地域包括医療病棟・回復期リハビリテーション病棟・地域包括ケア病棟入院料、ハは療養病棟入院基本料等の場合です。対象となる入院料や個別の取扱いは通知で確認してください。[3]

特に、「計画の作成に着手する日」と「計画が完成した日」は別です。計画書を完成させた日だけでは、いつ支援を始めたのかが分かりにくくなります。

また、療養病棟入院基本料等の場合に、加算1の話合いが原則14日以内だからといって、計画への着手やカンファレンスも14日以内でよい、と読み替えないようにしましょう。

院内の一覧表では、それぞれの日付を分けて管理すると確認しやすくなります。

■ 5.カンファレンスは、次にすることまで決める

カンファレンスを開いても、「ご家族と相談を続けます」「サービスを調整します」という共有だけでは、次の動きが曖昧になりがちです。

例えば、先ほどの患者さんなら、次のように具体化できます。

「夜間のトイレ移動について、リハビリ職が介助方法を評価する」

「病棟看護師が、ご家族と介助練習の日時を相談する」

「地域連携室が、ケアマネジャーとサービスの調整を進める」

誰が、何を、いつまでに確認するのか。それが分かれば、次のカンファレンスでは、前回決めたことがどこまで進んだかを確認できます。

栄養や食事、口腔の問題も、退院後の暮らしに関わります。「食事を用意できるか」「今の食形態を自宅でも続けられるか」といった視点から、必要な職種に参加してもらいましょう。

なお、算定上のカンファレンスには、参加する職員等の要件があります。院内の会議を開いたという事実だけで判断せず、自院の届出区分に合っているかを確認してください。

■ 6.計画書は、作成・説明・交付・記録まで確認する

退院支援計画は、院内で作成して終わりではありません。患者さんまたはご家族への文書による説明と交付、診療録等への添付または記載が必要です。計画が変わったときも説明し、必要時には変更後の計画を交付します。[4]

実務では、次のことが追えるようにしておくとよいでしょう。

いつ、誰に、誰が説明したか

どの内容の計画を交付したか

患者さん・ご家族から、どのような希望や不安が出たか

計画が変わった場合、何を変更し、どう説明したか

前回取り上げた入院診療計画書とも関係しますが、入院診療計画書を交付しているだけで、退院支援計画の要件まで満たしたとは判断できません。 自院の様式で、必要な内容と説明・交付の経過を確認できるかが大切です。

家族・親族との連絡が困難で、さらに患者さんの意思を確認できない場合については、疑義解釈で対応が示されています。該当する理由や連絡を試みた経緯等を記録し、必要に応じて退院を支援する方等へ説明します。「説明できなかった」の一言で済ませず、その経過を残してください。[5]

■ 7.退院前は「帰ったその日」を想像する

退院先が決まると、調整が一段落したように感じます。でも、患者さんの暮らしは、退院したその日から始まります。

薬は誰が管理するのでしょうか。食事やトイレの介助はどうするのでしょうか。訪問看護や介護サービスは、いつから始まるのでしょうか。

「訪問看護を依頼済み」という情報でも、初回訪問日が退院の数日後であれば、その間の対応を考える必要があります。

病棟は療養上の注意点を、地域連携室は受入先やサービスの調整状況を確認し、必要に応じて薬剤師やリハビリ職などの情報も合わせていきましょう。

退院時の引継ぎでは、「書類を送ったか」に加えて、相手が必要とする情報が届き、対応できる状態になっているかまで確認できると安心です。

■ 8.医事課は、退院してから初めて確認しない

医事課が退院後に記録を見て、計画への着手日やカンファレンスの記録が確認できないことに気づいても、その時点から当時の支援をやり直すことはできません。

ですから、医事課にも入院中から関わってもらいたいのです。

自院の届出区分、対象となる入院料、主な期限、確認する記録を整理し、病棟・地域連携室と共有しておく。判断に迷う患者さんは、退院前に相談する。この流れがあると、請求時の確認が進めやすくなります。

退院先や退院の状況も確認が必要です。死亡退院は算定できず、療養病棟入院基本料等に対応する区分では、他の保険医療機関へ入院するための転院は対象外です。該当する療養病棟等へ転棟してから退院する場合には、転棟後の入院期間にも条件があります。[6]

支援を行った事実と、加算を算定できるかどうかは、それぞれ確認しましょう。算定対象外であっても、患者さんに必要な支援は続けていきます。

■ 院内で使う、部署をつなぐ実務チェックリスト

以下は、日常業務を点検するための例です。算定要件を網羅した表ではありません。担当部署の分担は、自院の体制に合わせて調整してください。

時期 チェックすること 主に確認する部署等
入院時 □ 入院前の生活と、現在できることの違いを把握した 病棟
入院早期 □ 本人の希望、家族等の支援状況、利用サービスを確認した 病棟・地域連携室
入院早期 □ 退院困難な要因と、該当すると判断した理由を共有した 病棟・地域連携室
支援開始時 □ 依頼を受けた担当者と、次の対応予定が分かる 病棟・地域連携室
計画作成時 □ 抽出・話合い・計画着手・作成・カンファレンスの日付を確認できる 病棟・地域連携室・医事課
支援中 □ 課題ごとに、担当者と次に行う対応を決めた 関係職種
計画説明時 □ 説明・交付と、計画内容の保存を確認した 説明担当者・病棟・地域連携室
状態変化時 □ 計画を見直し、変更内容を説明・共有した 関係職種
退院前 □ 退院当日から必要な医療・介護・服薬等の支援がつながっている 病棟・地域連携室・関係職種
請求前 □ 届出、対象入院料、実施内容、時期、記録、退院先等を照合した 医事課・関係部署

この表を使うときは、「確認済み」の印だけでなく、確認日、担当者、記録の保存場所も分かるようにすると便利です。すでに電子カルテで確認できる情報は、その場所を共有すれば、別の用紙への重複記入を減らせます。

まずは最近退院した患者さんを1人選び、病棟・地域連携室・医事課で、支援の経過を一緒に振り返ってみてください。

入院時に気づいた課題が、誰に伝わり、どのような支援につながったのか。途中で情報が止まった場所があれば、そこから改善を始めてみましょう。

本稿は、入退院支援加算1・2に関する主な留意事項と、院内運用の提案を整理したものです。加算3や精神科入退院支援加算、個別の加算・併算定の要件は対象としていません。実際の算定に当たっては、自院の届出と患者さんの状況に合わせ、厚生労働省の最新の告示・通知・疑義解釈等の原典をご自身で確認してください。[7]

M&Cパートナーコンサルティング代表
村上佳子

病院医事課で12年間勤務した後、医療事務サービスで講師・派遣社員の教育を担当。ヘルスケア経営研究所を経て、2000年にメディカル21、2013年に一般社団法人医療実務研究会を設立。2022年にM&Cパートナーコンサルティング代表取締役に就任。病院・診療所のレセプト診断、減点・請求もれ対策、経営相談、事務職員の教育・指導に携わる。

略歴の出典:M&Cパートナーコンサルティング公式サイト

■ 出典・参照資料

[1]厚生労働省・留意事項通知 A246(2)原典を確認する

[2]厚生労働省・疑義解釈その2 問24原典を確認する

[3]厚生労働省・留意事項通知 A246(2)~(5)原典を確認する

[4]厚生労働省・留意事項通知 A246(6)原典を確認する

[5]厚生労働省・疑義解釈その1 問23原典を確認する

[6]厚生労働省・留意事項通知 A246(12)~(14)原典を確認する

[7]厚生労働省・令和8年度診療報酬改定資料原典を確認する