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「介護事業所の撤退が相次ぐ中で問われる地域の責任について」

静岡県湖西市で、市社会福祉協議会が運営する訪問入浴とデイサービスが2025年2月末に廃止されました。理由は急激な人件費の上昇と物価高による赤字の拡大です。同市内では社会福祉法人が運営する訪問介護事業所も3月末に休止し、約10年間サービスを受けてきた難病患者が事業者の切り替えを余儀なくされました。「介護は必要な仕事なのに大事にされていない気がする」という当事者の声が、現在の介護経営の構造的な問題を端的に表しています。

こうした事態は湖西市に限った話ではありません。東京商工リサーチによると、2025年の介護事業者の倒産件数は全国で176件に上り、2年連続で過去最多を更新しました。うち訪問介護が91件と半数以上を占めており、2024年度の基本報酬引き下げが追い打ちをかけた形です。介護報酬は公定価格であるため、コストが上昇しても事業者側が自由に料金を引き上げることができません。人件費・物価・燃料費が軒並み上昇する中で、経営の余地は急速に狭まっています。

こうした状況を受け、国は2026年6月1日に介護報酬の臨時改定を実施しました。処遇改善加算の拡充を柱とする内容で、訪問介護では最大28.7%の処遇改善加算が設定されています。介護職員1人あたり最大月1万9千円程度の賃上げが見込まれており、人材確保と定着への一定の効果が期待されています。ただし基本報酬の全面見直しは今回の改定には含まれておらず、経営を根本から好転させる施策としては2027年度の本格改定を待つ形となっています。

この問題が示す本質は、採算性の低いサービスや過疎地域における事業継続が、善意と使命感だけでは支えきれない段階に来ているという点です。湖西市では撤退した事業所の利用者と職員の受け皿を目指して新たに開業した事業者もあり、「誰かがやらないと介護難民が出てしまう」という言葉が地域の切迫感を物語っています。

事業所の撤退は経営判断ですが、その影響を受けるのは地域で暮らす高齢者や障害者です。介護サービスの空白地帯を生まないためには、行政・社協・民間事業者が連携して地域全体でサービス提供体制を維持する発想が不可欠です。経営的に厳しい時代だからこそ、自施設が地域においてどのような役割を果たし続けるかを改めて問い直す必要があります。

 

原田 和将

一般社団法人 アジア地域社会研究所 所属
介護現場での管理者としての経験を活かした職員研修、コーチングを中心に活動。コーチングはITベンチャーなど多岐にわたる業態で展開。国立大学での「AIを活用した介護職員の行動分析」の実験管理も行っており、様々な情報を元にした多角的な支援を行う。