2040年、日本の高齢化率は40%前後に達すると予測されています。85歳以上の超高齢者が急増し、医療と介護の複合ニーズを抱える利用者が増加する一方、支え手となる生産年齢人口は急激に減少します。令和7年7月に厚生労働省が公表したとりまとめでは、介護は特に地方において「地域の雇用や所得を支える重要なインフラ」と明記されました。介護事業所の管理者は今や、単なる施設運営者ではなく地域インフラの担い手としての役割を求められる時代に入っています。
この変化が最も深刻な形で現れるのが中山間・人口減少地域です。高齢者人口の減少によってサービス需要そのものが縮小し、「利用者減少→経営悪化→職員不足→サービス供給量低下→高齢者の圏外移住」という循環の形成が指摘されています。一方で大都市部では逆に高齢者人口の急増への対応が急務であり、中山間地域と大都市部では真逆の課題構造が同時進行しています。2040年問題は「全国一律の課題」ではなく、自施設が置かれた地域の文脈の中で捉えなければ、有効な手が打てません。
こうした状況への対応として、国が方向性として示しているのが事業所の多機能化と事業者間連携です。訪問介護と通所介護の一体運営、看護小規模多機能型居宅介護の活用、複数事業所間での人材シェアなど、単独施設の枠を超えた発想が求められています。高知県の「あったかふれあいセンター」や鳥取県の多分野連携の取り組みはその先進事例であり、公式文書には「制度の壁にとらわれず柔軟な対応を講じる」という表現が明記されています。待ちの姿勢ではなく、能動的に地域へ働きかける提案力が管理者に問われています。
ICTやテクノロジーの活用、タスクシフト・タスクシェアによる業務効率化も、限られた人的資源で地域を支え続けるための不可欠な手段です。自施設が地域においてどのような役割を果たすべきかを改めて問い直し、施設を超えたリーダーシップを発揮していくことが、2040年に向けた経営者の最大の課題となっています。
原田 和将
一般社団法人 アジア地域社会研究所 所属
介護現場での管理者としての経験を活かした職員研修、コーチングを中心に活動。コーチングはITベンチャーなど多岐にわたる業態で展開。国立大学での「AIを活用した介護職員の行動分析」の実験管理も行っており、様々な情報を元にした多角的な支援を行う。
