こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。
今回は、オンライン診療についてお話しします。
オンライン診療は、患者さんにとって便利な仕組みです。
通院負担が減る。
遠方の患者さんにも対応しやすい。
感染症流行時や災害時にも診療継続の選択肢になる。
こうしたメリットがあります。
一方で、オンライン診療は、対面診療と同じように、医療としての安全性、適切性、説明責任が求められます。
「ビデオ通話で診察しているからオンライン診療です」
「システムを契約しているから大丈夫です」
というだけでは不十分です。
令和8年度の立入検査では、オンライン診療の適切な実施について、病院や診療所だけでなく、オンライン診療受診施設についても確認対象として意識されています。
オンライン診療受診施設とは、簡単にいうと、患者さんがオンライン診療を受けるために利用する場所です。
たとえば、高齢者施設や薬局、その他の施設で、患者さんがそこに行ってオンライン診療を受けるような場合です。
このような形が広がると、医療機関だけでなく、診療を受ける場所の安全性やプライバシー、設備、職員の関与なども重要になります。
まず確認したいのは、オンライン診療の実施ルールです。
自院では、どの患者さんにオンライン診療を行うのか。
初診から行うのか、再診に限るのか。
どの疾患を対象にするのか。
急変時や対面診療が必要な場合、どこに案内するのか。
処方できない薬や注意すべき処方はあるのか。
本人確認はどうするのか。
通信トラブルが起きた場合はどうするのか。
これらを院内で決めておく必要があります。
次に、医師の研修です。
オンライン診療を行う医師は、指針を理解し、必要な研修を受けていることが求められます。
院長先生だけでなく、複数の医師がオンライン診療を行う場合には、誰が研修を受けているのか、いつ受講したのか、記録を残しておくことが大切です。
また、患者さんへの説明も重要です。
オンライン診療には便利な面がある一方で、対面診療に比べて得られる情報が限られるという特徴があります。
触診ができない。
表情や動きが見えにくいことがある。
通信環境によっては診療が中断する。
本人以外が同席している場合、プライバシーへの配慮が必要になる。
こうした点を患者さんに説明し、理解を得る必要があります。
とくに情報セキュリティとプライバシーについては、医療機関側だけでなく、患者さん側にも協力していただく必要があります。
周囲に人がいない場所で受診する。
録音・録画をしない。
本人確認に協力する。
安定した通信環境を用意する。
このような注意点を、事前に分かりやすく伝えておくことが大切です。
診療録への記載も忘れてはいけません。
オンライン診療を行った場合、オンラインで実施したこと、患者さんの状態、説明内容、判断内容、処方内容、次回方針、対面診療が必要と判断した場合の対応などを記録します。
「いつも通り診察したから大丈夫」ではなく、オンライン診療であることを踏まえた記録が必要です。
また、オンライン診療受診施設を利用する場合は、医療機関と施設との役割分担も確認しておきたいところです。
施設の職員は、医療行為をしてよいわけではありません。
患者さんの接続を手伝う、場所を案内する、といった支援と、診療行為は区別しなければなりません。
患者さんのプライバシーが守られる場所か。
感染対策や清潔性は確保されているか。
急変時の対応はどうするのか。
施設側の職員がどこまで関与するのか。
ここを曖昧にすると、あとでトラブルになります。
オンライン診療は、今後さらに広がる可能性があります。
だからこそ、始めるときにルールを整えておくことが重要です。
便利だから始める。
患者さんの要望があるから始める。
それ自体は悪いことではありません。
しかし、医療機関として、安全に継続できる体制がなければ、かえってリスクが高くなります。
事務長さんには、オンライン診療の運用を医師任せにしないでいただきたいと思います。
予約の取り方、同意書、説明文書、システム契約、通信トラブル時の連絡、診療報酬上の算定確認、個人情報保護、受診施設との連携。
これらは、事務部門が関わる部分も多いです。
医療の質と事務運用をつなぐ役割として、事務長さんが全体を見ておくことが大切です。
今回のポイントは3つです。
1つ目は、オンライン診療はシステム導入だけでなく、指針、研修、患者説明、記録をセットで整える必要があること。
2つ目は、オンライン診療受診施設を利用する場合、場所の安全性、プライバシー、職員の関与範囲を確認すること。
3つ目は、事務長さんが予約、説明、同意、記録、連絡体制まで含めて運用を確認することです。
次回は、自由診療と広告規制についてお話しします。
ホームページやSNSの表現は、医療機関の信頼に直結します。
立入検査の視点でも、しっかり見直しておきたいテーマです。

