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HOSPITALITY 〜長先生の接遇レッスン〜 VOL.90「接遇・人材育成の行き詰まりを“管理者のせい”にしない視点⑦」

第3回 「失敗しててもいいじゃないか」~ 接遇とコミュニケーションが動き出すとき

前回に続き、今回は「失敗を許容する」とはどういうことか、そして管理職の役割について考えていきます。

◆単にすべてを許容することではない

ここで大切なのは、何でも許すことではありません。
・患者さん・利用者さんの安全を脅かすこと ・患者さんやそのご家族、そして職員の尊厳を傷つける関わり ・明らかに理念から外れた行動

これらまで、すべてを受入れ、許容する必要はありません。 管理職に求められるのは、「ダメなことをなくす」ことではなく、 「チャレンジ出来るライン」を見極めたくさんの経験ができる場を作ることではないかと思います。必要に応じて理念や目的に基づいてそのラインを言葉にして伝えていく・・・ 何だか子育てと似ていますね。

接遇やコミュニケーションは、マニュアル通りには進みません。 相手は感情を持った「ひと」であり、同じ場面は二度と訪れないからです。 だからこそ、失敗を恐れて立ち止まる現場よりも、立ち止まりながら振り返れる現場のほうが、結果的に安全で、しなやかです。

「失敗しててもいいじゃないか」

それは、無責任な言葉ではありません。「考えたうえでの挑戦なら、支える」「一人では抱えさせない」という、管理職の覚悟を示す言葉なのだと思います。

管理職が完璧である必要はありません。そんな管理者から「完璧」をもとめられると息苦しさを感じ、身動きが取れなくなりますよね

私は、先に答えを持っていなくてもいいと思うのです。 大切なのは、理念に立ち返り、一緒に考える姿勢を持ち続けることです。 失敗を恐れない現場ではなく、失敗を活かせる現場へ。 接遇とコミュニケーションが動き出す瞬間は、 管理職が「正しさ」よりも「信頼」を選んだ、その先にあります。

シリーズを終えて

「管理者は本当に気づいていないのか?」 その問いに対する一つの答えは、「気づいていない」のではなく、「一人で抱えすぎていた」のかもしれません。

私自身、新米課長のころは、「わたしが何とかしなくちゃ」と頑張りすぎ、会議も勉強会も形骸化してしまった経験があります。課長さんと主任さんがほぼ課内作業の取りまとめを取り仕切られ、スタッフは日々の「作業」のみ、責任ある仕事は何も任されていない状況の中に着任しました。どう考えても一人で病院全体の業務を行うことはできず、やらせてみて、権限移譲していき、ここまでだったら失敗しても何とか修復できる・・・そんなラインを決めて仕事をしていたことを懐かしく思い返しています。

「失敗しててもいいじゃないか。」
そう言える環境をつくることが、人を育て、現場を育てる第一歩になるかもしれません。

長 幸美(ちょう ゆきみ)

(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。