第2回 「結論を急ぎすぎていないだろうか」~ 指導と育成の境界線、どこまで許容できるのか
前回は、管理職が結論を急ぐことで現場に「枠」が生まれていくことについてお伝えしました。今回は、その影響が実際の現場でどのように表れるのか、事例を通して見ていきます。
◆ある医療機関での事例~問題行動と思われたけれど・・・?
ある認知症の患者Oさんは「問題行動」がありました。昼夜逆転と夜間の不穏行動です。 夜間寝ようとせず、病棟内をウロウロします。昼間はベッドでグーグー寝ています。 眠剤を投与しても、足元はふらついていますが起きてきます。 Aさんは、昼間できるだけ起きて気持ちよく過ごすように工夫されました。 Bさんは、眠剤を投与しても寝ないことを先生に訴えました。 Cさんは、夜眠れない患者さんが寂しくないように詰所に招き入れ、仕事をしながら一緒に話をするようにしました。
別の認知症の患者Tさんは、目に留まったものを自分のベッドにもってきてしまいます。 ある時はお散歩中に見つけた木の実やお花、ある時はロビーにおいてあるボールペンやパンフレット、時には消毒薬なども持ってきてしまいます。先日はふらりと別の利用者さんの部屋に入ってタオルを持ってきてしまいました。
このような場面で、管理職はつい「どれが正解なのか」「どの対応が“正しい”のか」 という結論を求めてしまいがちです。 では、ここで管理職が「夜間徘徊は問題行動だから、どう対応すべきか」「持ち物を取ってしまう行為はあってはならない行為だから禁止しなければならない」 と、正解を一つに決めていたらどうなるでしょうか。 Aさんの工夫は評価されず、 Bさんの報告も「また同じ話か・・・」と受け流され、 Cさんの関わりは「業務としてどうなのか」と指摘されるかもしれません。
その結果、工夫をして最善の対応は何かと考えてきたスタッフはどう感じるでしょうか? 「あぁ~、結局、何をしてもダメなんだ」 「迷ったら、まず聞かないといけない」 「自分で考えない方が安全だ」 そう感じたスタッフは、自分でより良い方法を考え行動することをやめてしまいます。 そして、それをそばで見ていた中間管理職は、部長や先生の指示に従わないといけないと学習し・・・つまり「指示待ち族」の誕生です。

長 幸美(ちょう ゆきみ)
(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。
