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HOSPITALITY 〜長先生の接遇レッスン〜 VOL.84「接遇・人材育成の行き詰まりを“管理者のせい”にしない視点」

第1回 期待しているのに、動けない

~ 副主任・主任が“気づかなくなった”ように見える理由

「この子、よく気が付いていたのに、最近やる気がないというか・・・」
「それぞれに良い芽を持っていて、何とか伸ばしてあげたいけれど、どうしたらいいのか分からなくて・・・」
「先読みして段取りできるようになってほしいのだけれど・・・」
「報・連・相ができていないわ」

副主任や主任といった役職をつけたあと、こんなお悩みを耳にすることは少なくありません。期待しているからこそ、「思っていた動きと違う」「もう少し周りを見てほしい」と感じてしまうのです。

では本当に、その人たちは“気づかなくなった”のでしょうか。
あるいは“やる気がなくなった”のでしょうか。

ある職場の主任は、一般職の頃は「よく気が付く人」と評価されていました。
患者さんや利用者の小さな変化にも気づき、周囲を見ながら動ける存在だったそうです。
ところが主任になってから、
「動きが硬くなった」
「指示待ちに見える」
と言われるようになりました。

本人に話を聞くと、こんな言葉が返ってきました。
「自分が判断していいのか分からなくなったんです」
「失敗したら、“主任なのに”って言われそうで・・・」
「上がどう判断しているのか・・・心配で、どう動いたらいいのかわからなくて・・・」

能力が落ちたわけでも、やる気がなくなったわけでもありません。
ただ、立場が変わったことで、見ている景色と選択肢が変わったと考えることはできないでしょうか?

立場が変わると、意識も変わる?

副主任や主任になり、
「よし、自分が職場を良くしていこう」と前向きになる一方で、
次のような思いを抱きやすくなります。

  • 余計なことをしてはいけないのではないか・・・
  • 失敗したら誰が責任をとるんだろう?
  • うまくいかなかったら、立場を失うのではないか
  • 相談したいけれど、誰にどこまで話していいのか分からない

この状態では、
「気づいても踏み出さない」
「分かっていても様子を見る」
という行動が増えていきます。

それは怠慢ではなく、不安に押しつぶされている状態です。

しかし周囲から見ると、
「前より気づかなくなった」
「主体性がなくなった」
「これまでできていたのにどうして・・・?」
と映ってしまうのです。

接遇やコミュニケーションの場面でも、同じことが起こります。

「声をかけた方がいい気がする」
「でも、今言っていいのか分からない」
「踏み込んで関係がこじれるのも怖いし・・・どうしよう?」

その結果、
「見ない」「触れない」という選択を重ねてしまう。

気づいていないのではなく、気づかない選択をしている状態に陥ってしまっているのです。

事務長や看護部長も、一度は通ってきた道

ここで一度、管理者側も問い直してみてください。

  • この人に、どこまでの判断を任せているでしょうか
  • 結論を急ぎ過ぎてはいないでしょうか
  • フラットに話ができる場はあるでしょうか
  • 失敗したとき、それを誰が引き受ける前提でしょうか
  • 「先読みしてほしい」の具体像を、共有できているでしょうか

期待が高いほど、説明や前提の共有が省略されがちです。
しかし、その“省略”こそが、動けなさを生んでいることがあるのです。

副主任や主任は、「育てられる側」から「育てる側」へ移行する途中にいます。
その過程で戸惑うのは、決して特別なことではありません。

すぐに理想の動きができなくてもいい。
完璧な判断ができなくてもいい。

まずは、立ち止まって整理すること。
それが、接遇やコミュニケーションを再び動かす第一歩になります。

長 幸美(ちょう ゆきみ)

(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。