2026年度診療報酬改定が本格始動
厚生労働省は1月23日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会において、2026年度診療報酬改定の「個別改定項目」、いわゆる「短冊」を公表しました。これは、昨年末に決定した改定率を受けて、具体的にどの項目が見直されるかを示した重要な資料です。具体的な点数は2月上旬から中旬の答申で明らかになる予定ですが、クリニックの経営に直結する方針が既に示されています。
今回の改定は、物価高騰と賃上げへの対応を最重点課題に据えており、初再診料や入院基本料の引き上げ、新設される「物価上昇に関する評価」「外来・在宅ベースアップ評価料」など、基本診療料部分の底上げが図られています。一方で、かかりつけ医機能の強化、医療DXの推進、後発医薬品の使用促進など、クリニックが今後取り組むべき方向性も明確に示されました。
クリニック事務長が押さえるべき3つの重要ポイント
1. 基本診療料の引き上げと物価対応評価の新設
診療所の初診料・再診料が引き上げられ、さらに2026年度および2027年度の物価高騰に対応するため「物価上昇に関する評価」が新設されます。これは初診時・再診時それぞれに算定可能な加算で、2027年度には2026年度の2倍の点数となる段階的措置が導入される方針です。
2. スタッフの賃上げを評価する新たな加算
医療従事者の処遇改善を後押しするため「外来・在宅ベースアップ評価料」が新設されます。これは、スタッフの賃上げを実施した医療機関を直接評価する仕組みで、人材確保が厳しさを増す中、積極的に取り組むクリニックを支援する狙いがあります。
3. かかりつけ医機能と地域連携の強化
機能強化加算の見直しや、在宅医療における積極的役割を担う医療機関への評価拡充など、地域における医療機関の役割がより明確化されています。特に、他医療機関との連携体制や情報提供の実績が評価される方向性が示されており、地域包括ケアの中でクリニックが果たすべき役割が問われています。
事務長が今すぐ取るべき3つのアクション
【情報収集】厚労省の公式資料を必ずチェック
中医協の資料は厚生労働省のウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html)で公開されています。第644回総会の資料「個別改定項目について(その1)」は約800ページの大部な資料ですが、自院に関係する項目を抜粋して院長や幹部と共有しましょう。さらに、医療系専門メディア(m3.com、日経メディカル、GemMedなど)の速報記事も併せて読むことで、改定の背景や専門家の見解を把握できます。
【院内体制の棚卸し】現在の施設基準と算定状況を確認
2月の答申で具体的な点数と施設基準が明らかになる前に、現在自院が算定している加算や届出状況を一覧化しておきましょう。特に、新設される加算の要件(研修受講、設備整備、連携体制など)を満たせるか事前に検討することで、6月の改定施行後に素早く対応できます。賃上げ関連の加算については、給与規定の見直しや賃上げ実績の証明方法についても、社労士と相談しながら準備を進める必要があります。
【2月答申に向けた準備】シミュレーションと職員説明の準備
2月中旬に点数付きの答申が出たら、すぐに収入シミュレーションを行う必要があります。過去3か月分のレセプトデータをもとに、改定前後での診療報酬の変化を試算し、年間の収支への影響を把握しましょう。また、6月からの新体制について、職員への説明と研修も欠かせません。新しい加算の算定要件や記録の残し方、患者説明の方法などを事前に周知し、現場がスムーズに対応できるよう準備を整えましょう。
これからの医療経営に必要な視点
今回の改定は、物価・賃上げ対応という「守りの改定」と、地域医療機能の強化という「攻めの改定」が同時進行しています。クリニック事務長には、目の前の点数変更への対応だけでなく、2040年を見据えた医療提供体制の中で自院がどのような役割を果たすべきか、中長期的な視点が求められます。
今後の個別改定項目も順次公表される見込みです。情報のアンテナを高く保ち、医師会や地域の医療機関とも情報交換しながら、自院に最適な対応策を見出していきましょう。2026年度改定を乗り切るカギは、2月答申までの「準備期間」をいかに有効活用できるかにかかっています。
※本記事は2026年1月23日時点の情報をもとに作成しています。
