障害福祉サービスの給付費が急増し、人材確保も喫緊の課題となる中、厚生労働省は2025年、新たに「就労継続支援A型・B型事業所の運営に関する自治体向けガイドライン」を策定し、全国の自治体に通知しました。
■ 背景:質の確保と経営の透明化が喫緊の課題に
現場では「就労支援」とは名ばかりの事業者が参入し、障害者の就労能力向上に資さない事業実態が問題視されてきました。今回のガイドラインは、こうした課題に対応し、自治体による事業所指定や監査の際に活用できる視点を整理したものです。
■ 不適切運営を防ぐチェックポイント
厚労省は、以下のような活動を「就労支援の本来の趣旨から逸脱している」として注意を促しています。
- eスポーツや卓球・麻雀教室の手伝い
- 植物の水やりのみといった限定的な活動
- 単なる「在所」のみを求める運営
- 在宅支援での「自習」など、実質的な支援を伴わない活動
これらは就労能力向上に直結しないとして、 給付費対象の「生産活動」として不適切 であると明示されました。
■ 勧誘・利用者募集方法にも厳格化
- 「1日来れば◯◯円」など過度な報酬アピール
- 電子機器や商品券など金品提供の宣伝
- 一律無料の昼食・交通費などを強調した誘導
上記は 不当な勧誘とみなされる恐れがある ため、自治体のチェックポイントとして明記されています。
■ 「生産活動シート」で会計を可視化
自治体向けに新たに導入された「生産活動シート」は、Excel形式で事業所の以下の情報を記録・提出させるものです。
- 生産活動の内容
- 賃金・工賃の支払い状況
- 収支構造と取引状況
これにより、給付費の不適切な流用 や グループ会社との不当な取引 を可視化し、事務担当者による健全性の確認がしやすくなります。
■ 新規指定の厳格化と「コンサル丸投げ」の排除
ガイドラインでは、新規指定にあたり法人代表者や管理者が直接協議・面談に出席することを原則とし、コンサルタント会社への「丸投げ」申請を排除。制度理解と経営責任の所在を明確にする狙いです。
また、安易な開業を推奨する不適切な動きが見られた場合、地域機関同士での情報共有や厚労省への通報も推奨されました。
■ まとめ:制度の信頼回復へ向けて
今回のガイドラインは、制度の本来の目的である「障害者の就労支援」に立ち返り、 自治体と事業者双方に高いガバナンス意識 を求めるものです。事務長・管理者の皆様は、自法人が適切に運営されているか今一度確認し、ガイドラインに則った体制整備を進めることが求められます。
