傷病名は、保険医療機関において行われた診療行為に対して診療録と診療報酬明細書の傷病名及び診療内容が一致しなくてはなりません。また、レセプト審査においては、個々の診療行為が、保険診療のルール(療養担当規則、診療報酬点数表、関連通知)に適合しているかどうかを確認する行為であり、特に診療行為の根拠となる傷病名の不備による査定に繋がらないよう取り組みが必要です。
診療録、診療報酬明細書への記載の留意点
1.診断の都度、医学的に妥当適切な傷病名を主治医自ら診療録に記載すること。なお、請求事務担当者が主治医に確認することなく傷病名をつけることは認められない。
(療養担当規則 第2章 保険医の診療方針等)
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(診療録の記載) 第22条 保険医は、患者の診療を行った場合には、遅滞なく、様式第1号(略)又はこれに準ずる様式の診療録に、当該診療に関し必要な事項を記載しなければならない。 |
(医師法)
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第24条 医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。 2 前項の診療録であって、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、5年間これを保存しなければならない。 |
2.検査等の査定を防ぐ目的で付けられた医学的な根拠がない傷病名を付けて保険請求することは認められない。よって、必要があれば症状詳記等で説明を補うようにする。
いわゆる「レセプト病名」について保険適応外の診療行為を保険請求するために、実態のない架空の傷病名を用いてレセプトを作成することは極めて不適切で認められない。
(不適応な傷病名の例)
検査の適応外実施目的
・「慢性肝炎の疑い」⇒適応外の感染症の検査
・「脳梗塞の疑い」⇒適応外のCT、MRI等の検査
・「○○癌の疑い」⇒適応外の腫瘍マーカーの検査
- 症状詳記の書き方
レセプト上の傷病名等のみで診療内容の説明が不十分と思われる場合は、請求点数の高低に関わらず、「症状詳記」で補う必要がある。なお、症状詳記については、
・簡潔で読みやすく分かりやすく
・診療行為が必要な具体的理由を簡潔明瞭かつ正確に記述すること
・客観的事実(検査結果等)を中心に記載すること
・診療録の記載やレセプトの内容と矛盾しないこと
3.慢性・急性、部位(左・右)等の区別をすること
・部位の記載がない
捻挫、神経痛、関節痛、変形性関節症、圧迫骨折、切創、皮膚潰瘍等
・左右等の記載がない
膝関節症、外耳炎、大腿骨頚部骨折等
今回は、傷病名の記載についての留意点として、前半を紹介させていただきました。後半は、次回に説明を行います。

能見 将志(のうみ まさし)
診療情報管理士。中小規模の病院に18年間勤務(最終経歴は医事課長)。 診療報酬改定、病棟再編等を担当。診療情報管理室の立ち上げからデータ提出加算の指導まで行う。
