今年もインフルエンザの本格的な流行期が始まりました。すでに全国的に注意報レベルに達しており、医療機関にとっては、患者さんだけでなく 職員を守ることが診療体制の維持に直結する時期 です。特に外来・病棟・検査部門では、例年以上に患者数が増加しており、感染リスクが高い状態が続いています。
ここで改めて、医療従事者として最低限「必ず守るべき」感染対策 を共有し、全職員で徹底したいと思います。
■ 1. 出勤前のセルフチェックは“全員必須”
インフルエンザの初期症状は、一般的な風邪や疲労と見分けがつきにくいものです。
「微熱だが行ける気がする」
「今日は外来が忙しいから休めない」
ーーその“無理”が、病院全体のクラスターを引き起こします。
出勤前の体温測定・咽頭痛・倦怠感のチェックは必須。
少しでも疑わしい場合は、迷わず上長へ相談し、抗原検査を実施してください。医療職が無理をすることは美徳ではありません。**診療の継続を守るための「リスク管理」**です。
■ 2. マスク・手指衛生は「100%」を目指す
マスクは鼻までしっかりフィットさせ、診療エリアでは外さないこと。
特に申し送り・カンファレンス時の“マスク外し飲食”がクラスターの最も多い原因です。
- カンファ室での飲食禁止
- ナースステーションでのお菓子のシェア禁止
- 休憩室での会話は最低限
「ステーション内は食品持ち込み不可」を今一度徹底します。
また、手指消毒は 患者対応前後・物品共有前後・グローブ脱着直後 が必須ポイントです。
“うっかり忘れ”は誰にでもあるものですが、医療者である以上、「癖になるレベルでの習慣化」をお願いします。
■ 3. ワクチン接種は組織防衛の一部
個人の自由──その通りです。
しかし、医療機関におけるワクチン接種は、**「患者さんへの約束」**でもあります。
発症リスクを下げ、重症化を防ぐことは、結果として逼迫した現場を守ることにつながります。
まだ接種していない職員は、早めの接種を推奨します。
■ 4. 院内で広げないためのルール
院内感染を起こすと、最短でも数日間の病棟閉鎖・職員配置の組み替えが必要となり、診療に大きな影響を及ぼします。以下の点を徹底してください。
- 共有パソコンやPHSはこまめに清拭
- 多職種カンファレンスは短時間で
- 休憩室は換気を強化し、密を避ける
- 更衣室での“素顔での密談”禁止
「職員同士でうつし合わない」ことが、組織全体の医療提供を守ります。
■ 5. 最後に ― “自分を守ることは患者を守ること”
インフルエンザ対策は、特別なことではありません。
しかし、“当たり前を当たり前にやり切るかどうか”で、院内の安全性は大きく変わります。
医療機関に求められるのは、
「誰かがやるから大丈夫」ではなく、
「自分がやることで全体を守る」というプロフェッショナルとしての姿勢です。
ひとり一人の行動が、患者さんと仲間の命を守ります。
今年の流行期も、安全で安定した診療を継続できるよう、全員で徹底して取り組みましょう。
