総務省が公表した人口推計によると、65歳以上の高齢者は3619万人となり、総人口の29.4%を占め過去最高を更新しました。特に75歳以上の割合は17.2%と主要国でも突出しており、日本社会における高齢化の進展を示しています。一方で、高齢者の就業者数も930万人と21年連続で増加し、働く人の7人に1人が高齢者という状況です。少子化による人手不足を背景に、元気なシニアが労働力として大きな役割を担っていますが、労災発生率が高齢になるほど上昇するため、今年5月に改正労働安全衛生法が成立し、事業者には作業環境改善の努力義務が課されました。
注目すべきは、介護職として働くシニア世代の動向です。現役介護職員の約6割は異業種出身で、製造業や小売業からの転職も多く見られます。正社員として働く割合は63.5%と、全産業に比べて高い点も特徴です。介護職を選んだ理由としては「社会に貢献できるから」「年齢に関係なく働けるから」が多く、家族の介護経験をきっかけとするケースも目立ちます。満足している点では「やりがい」や「人間関係の良さ」が挙がる一方、課題としては「給与や待遇」「身体的負担」が大きく指摘されています。それでも6割以上が65歳を超えても働き続けたいと回答しており、介護職はシニアにとって意義あるセカンドキャリアとなっています。
現在多くの事業所が生産性向上の取り組みを積極的に行っていますが、シニア世代の職員にどの業務を任せられるのか、またどのようなタスクを新たに身につけてもらう必要があるのかを検証していくことが欠かせません。こうした棚卸しを進めることで、体力面や経験値に応じた役割分担を実現し、現場の負担を分散し、さらにサービスの質を高めていくことができるはずです。
原田 和将
一般社団法人 アジア地域社会研究所 所属
介護現場での管理者としての経験を活かした職員研修、コーチングを中心に活動。コーチングはITベンチャーなど多岐にわたる業態で展開。国立大学での「AIを活用した介護職員の行動分析」の実験管理も行っており、様々な情報を元にした多角的な支援を行う。