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「排泄デバイスについて」

 介護の現場で最も負担が大きい業務の一つが「排泄ケア」です。従来は利用者の様子を観察しながら、経験と勘に頼っていた排泄タイミングを判断していましたが、その領域にも“見える化”の波が押し寄せています。

 パラマウントベッドが発売した「おむつCOLOR」は、紙おむつ内の色の変化をセンサーで検知し、排便の発生をリアルタイムで通知する製品です。専用アプリと連携し、スタッフのスマートフォンへ排泄情報を通知します。既存の見守り支援システム「眠りCONNECT」とも連動し、排泄・睡眠・体重・温湿度を一元管理できる点が大きな特徴です。夜間パックと1日パックの選択肢があり、利用者の状態に応じた柔軟な運用も可能です。  一方、TOTOが8月に発売予定の「ネオレスト」シリーズは、便の色・硬さ・量をセンサーで測定する高機能トイレです。一般向けとしては国内初の試みで、落下中の便にLEDを照射し、反射光を分析することで排泄の状態を記録します。こちらもスマートフォンアプリと連携することで、グラフによる傾向分析や健康チェックが可能となります。最大6人までデータ管理ができる点も、家族介護や在宅医療との親和性を高めます。

 これらはいずれも「排泄」を単なる生理的行為ではなく、「健康指標」として捉え直す発想に基づいています。また、排泄の記録・通知は介護者の負担軽減に直結していきます。介護DXとは、単に機器を導入することではありません。人の負担を軽減しながら、利用者の尊厳に寄り添うケアを可能にする“手段”です。排泄の見える化は、介護現場における真の変革の入口に立っているのかもしれません。

 

原田 和将

一般社団法人 アジア地域社会研究所 所属
介護現場での管理者としての経験を活かした職員研修、コーチングを中心に活動。コーチングはITベンチャーなど多岐にわたる業態で展開。国立大学での「AIを活用した介護職員の行動分析」の実験管理も行っており、様々な情報を元にした多角的な支援を行う。