令和8年度診療報酬改定対応/説明・交付・記録の確認漏れを防ぐ
作成日:2026年10月29日
本文の情報確認時点:2026年10月29日
入院診療計画書は、作成しただけで業務が完了するものではありません。患者さんへの説明、文書の交付、診療録への記録・保存まで確認する必要があります。
令和8年6月1日からの診療報酬改定では、医師や患者等の署名を不要とする見直しや、一定の短期入院で計画の策定・文書による説明・交付を省略できる取扱いが示されました。ただし、必要な説明や記録までなくなったわけではありません。
この機会に、「書類が作成されているか」だけでなく、「説明・交付・記録まで完了しているか」を確認できる院内手順へ見直しましょう。[1]、[2]
マンガで確認する入院診療計画書
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■ 医療法上の義務と、診療報酬上の要件を分ける
医療法では、病院・診療所の管理者に対し、担当医師・歯科医師による書面の作成、患者さんまたは家族への交付、適切な説明が行われるよう求めています。医療法施行規則では、原則として、入院した日から起算して7日以内に作成・交付・説明を行うとされています。
書面には、患者さんの氏名・生年月日・性別、主として診療を担当する医師等の氏名、傷病名・主要な症状、検査・手術・投薬その他の治療計画などを記載します。治療計画には看護・栄養管理を含み、推定入院期間なども必要です。[3]、[4]
一方、診療報酬では、入院診療計画の基準が入院基本料・特定入院料等の算定に関係します。医師、看護師、必要に応じた関係職種が共同して総合的な計画を策定し、文書による説明等を行うことが基本です。[5]
医療法上の例外に該当することだけで、診療報酬上も省略できるとは判断できません。 院内手順では、二つの制度を分けて確認することが大切です。
■ 署名は不要でも、説明と氏名等の記載は必要
令和8年度改定後は、入院診療計画書について、医師や患者等の署名は不要とされています。
通常の取扱いは、説明に用いた文書を患者さん等に交付し、その写しを診療録に添付するとともに、説明日・説明者を診療録に記載するというものです。ただし、通知には、医師の署名がある場合は、説明日・説明者を診療録に記載する必要はないという例外があります。患者さんや家族の署名だけを、この例外の根拠にはできません。[6]
また、署名が不要になっても、患者氏名や担当医師名など、計画書に必要な記載項目まで省略できるわけではありません。署名の廃止と、説明・記載事項の省略は区別しましょう。
院内運用として説明日・説明者の記録場所を統一する方法も考えられますが、医師署名がある場合にも別途記録する運用は、自院で採用する確認方法です。全国一律の必須要件として扱わないようにします。
■ 通常対応のチェックリスト
まずは、制度上の要件に沿って次の項目を確認します。短期入院等の例外を適用する場合は、次節以降の確認が必要です。
| 工程 | チェック項目 | 確認のポイント |
|---|---|---|
| 期限 | □ 原則の期限内に作成・説明・交付を行った | 作成日だけで完了を判断しない。入院前説明の取扱いも確認する |
| 内容 | □ 必要事項が記載されている | 患者情報、担当医師名、傷病名・症状、治療・検査・手術の計画、推定入院期間等を確認する |
| 個別性 | □ 実際の病状や予定に即した内容である | 定型文を使う場合も、患者さんごとの内容になっているか確認する |
| 共同策定 | □ 医師・看護師・必要な関係職種が共同して策定した | 各職種の情報を反映する |
| 説明 | □ 担当医師等による適切な説明が行われた | 看護師等の補足説明や事務職員の交付確認と、医師等が担う説明を区別する |
| 交付 | □ 説明に用いた文書を患者さん等に交付した | 印刷済み・病棟保管中の状態を、交付済みにしない |
| 保存 | □ 文書の写しを診療録に添付した、または電子保存の条件を満たしている | 交付した内容と保存した内容の一致を確認する |
| 説明の記録 | □ 説明日・説明者を診療録に記載した | 医師の署名がある場合の例外を区別する |
説明を担う医師・歯科医師の位置づけは医療法施行規則に、共同策定や文書交付等の取扱いは施設基準通知に示されています。役割分担を進める際も、この区別を保つ必要があります。[7]、[8]
内容の点検も重要です。九州厚生局の令和6年度適時調査では、共同策定の不足、必要事項の欠落、画一的な記載、文書交付・写しの添付の不備などが指摘されています。旧年度の指摘を現行要件と照合しながら、点検に活用しましょう。[9]
■ 短期入院の省略は、期間・患者の状態・説明・記録を確認する
診療報酬上、次の条件を満たす場合には、総合的な入院診療計画の策定と、文書を用いた説明・交付を省略できる取扱いがあります。
- 入院期間が2日以内と見込まれる、または3日以上を見込んでいたものの結果的に2日以内となった。
- 診療や退院後の治療・生活に支障がないと認められる。
- 入院診療について必要な説明を行っている。
省略する場合は、診療録に入院期間〔見込みを含む〕、説明内容、説明した日時等を記載します。「2日以内だから不要」と自動的に判断せず、条件と記録をセットで確認します。[10]
| 省略時の確認 | チェック項目 |
|---|---|
| 期間 | □ 見込みまたは実際の入院期間が条件に該当する |
| 判断 | □ 診療や退院後の治療・生活に支障がないと認められる |
| 説明 | □ 入院診療について必要な説明を行った |
| 記録 | □ 入院期間、説明内容、説明日時等を診療録に記載した |
省略が可能と判断した理由を院内で確認できるようにすることも、実務上有用です。ただし、記録欄の追加などの業務改善策と、通知で明示された記載事項は分けて整理しましょう。
なお、医療法の施行通知では、短期入院の例外として「入院日から起算して7日以内で退院することが見込まれる場合」が示されています。この「7日以内」を、診療報酬上の「2日以内」の省略条件に置き換えて使うことはできません。[11]
■ 電子保存と、患者さんへの電子提供は別の業務
令和8年4月1日の疑義解釈その2・問23では、診療情報を電磁的方法で記録・保存している場合、患者さん等に交付したものと同じ内容の文書が電子媒体で保存され、説明日・説明者が記載されていればよいとされています。
この条件を満たす場合は、院内保存のために紙を再スキャンする方法に限られません。 単に文書のひな型や更新後の画面が残っているだけでなく、交付した内容を確認できる保存になっているか点検しましょう。[12]
一方、患者さんへの電子提供には別の条件があります。あらかじめ使用する電磁的方法の種類やファイルへの記録方式を示して承諾を得ること、患者さん・家族が書面として出力できる方法であることなどが必要です。承諾後に電子提供を受けない旨の申出があった場合の取扱いも定められています。
画面表示も省令に掲げる方法の一つですが、これらの条件を満たす必要があります。院内画面を見せただけ、電子カルテに保存しただけで交付まで完了したとは判断しないようにしましょう。[13]
■ 入院前説明と、説明困難な場合の対応を引き継ぐ
予定入院では、入院前の外来で文書を提供し説明した場合も、入院後7日以内に行ったものと同様に取り扱われます。この扱いは平成24年の疑義解釈でも示されており、令和8年度に初めて認められたものではありません。[14]
業務上は、外来から病棟へ、使用した文書、説明日・説明者、交付の状況を引き継ぐと確認が容易になります。入院時の病状や治療予定と、事前に説明した計画に相違がないか確認することも有用です。
本人が説明を理解できないと認められる場合は、家族等への説明で対応する取扱いがあります。説明できる家族等もいない場合には、その事情を診療録に記載し、本人への説明が可能になった場合や家族等が現れた場合に、速やかに説明して記録することが示されています。[15]
これは、単なる説明忘れや、本人へ説明できるのに家族の来院を待っている場合まで、一律に説明を延期できるという趣旨ではありません。
■ 院内運用では「残っている業務」を見えるようにする
ここからは、制度上の一律の義務ではなく、確認漏れを防ぐための院内運用の提案です。
| 運用上の確認 | 具体的な方法 |
|---|---|
| 完了状況を分ける | 「作成」「説明」「交付」「記録・保存」を別々に管理する |
| 担当者を決める | 各工程の担当者と、未完了時の連絡先を決める |
| 外来と病棟で共有する | 入院前説明の文書と実施状況を病棟から確認できるようにする |
| 例外を管理する | 短期入院の省略や説明困難の事情を、通常の未実施と区別する |
| 未完了を引き継ぐ | 次に対応する職員と確認時期を明確にする |
文書が完成していても、患者さんに渡していなければ交付は未完了です。説明した事実を確認できても、必要な保存や記録がなければ、その対応が残っています。
事務長や管理者は、様式の変更とあわせて、医師による説明、病棟での交付確認、記録の点検がどうつながるかを確認しましょう。署名収集の負担軽減を、説明と記録の確実な実施につなげることが、今回の業務見直しのポイントです。
本稿は、入院診療計画書に関する共通的な取扱いを整理したものです。算定する入院料や患者さんの状況によって必要な対応が異なるため、実際の運用では、厚生労働省の最新の通知・疑義解釈等の原典をご確認ください。改定関係資料は、[16]に掲載されています。
M&Cパートナーコンサルティング代表
村上佳子
病院医事課で12年間勤務した後、医療事務サービスで講師・派遣社員の教育を担当。ヘルスケア経営研究所を経て、2000年にメディカル21、2013年に一般社団法人医療実務研究会を設立。2022年にM&Cパートナーコンサルティング代表取締役に就任。病院・診療所のレセプト診断、減点・請求もれ対策、経営相談、事務職員の教育・指導に携わる。
■ 出典と参照箇所
[1]厚生労働省・令和8年度改定説明資料
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[2]疑義解釈その2・適用日の記載
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[3]医療法第6条の4
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[4]医療法施行規則第1条の5~第1条の7
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[5]基本診療料の施設基準通知・別添2第1の1
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[6]基本診療料の施設基準通知・別添2第1の1(6)
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[7]医療法施行規則第1条の5
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[8]基本診療料の施設基準通知
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[9]九州厚生局・適時調査における主な指摘事項、2ページ
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[10]基本診療料の施設基準通知・別添2第1の1(3)
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[11]平成19年3月30日医政発第0330010号・第1の2
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[12]令和8年4月1日疑義解釈その2・問23
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[13]医療法施行規則第1条の8
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[14]平成24年3月30日疑義解釈その1・問16
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[15]厚生労働省掲載ガイドライン・平成19年疑義解釈その7問32の引用
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[16]厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
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