医師不足への対応として、看護師の権限を拡大する動きが先進国共通の潮流になっています。米国では1960年代から「ナースプラクティショナー(NP)」という制度が定着しており、自らの判断で患者対応や一部薬剤処方まで担うことができます。もともと医師が少ない地方・過疎地域における医療の担い手として発展してきた制度で、近年はフランスでも同様の制度が成立するなど、欧米全体に広がりを見せています。
背景にあるのは深刻な医療人材不足です。米国では2033年までに最大12万4千人の医師不足が予測され、看護師も年間20万人以上の確保が必要とされています。需要の急増に対して供給が追いつかない構造は、日本においても2040年に向けて同様の課題として迫りつつあります。
日本では医行為を医師のみが担うという原則が強く、訪問看護においても医師の指示書が必須です。この制度的な枠組みは欧米のNP制度とは大きく異なりますが、在宅医療・訪問看護の需要が急増する中で、看護師がより広い裁量を持って地域医療を支える方向性への議論は、日本でも少しずつ高まっています。
介護事業所の管理者にとってこの潮流が示す示唆は、医療と介護の連携のあり方です。訪問看護事業所や看護小規模多機能型居宅介護との連携を深め、医師・看護師・介護職がそれぞれの専門性を発揮しながら役割分担する体制を地域の中で構築していくこと。欧米のNP拡大が「医師過疎地域の課題解決」から生まれたように、日本の中山間地域や人口減少地域においても、職種間の柔軟な役割分担と連携がサービスの継続を支える鍵になっていきます。
制度の変化を待つのではなく、既存の枠組みの中で医療と介護の連携をどう深めるかを今から考えておくことが、2040年に向けた現場の備えとなります。
原田 和将
一般社団法人 アジア地域社会研究所 所属
介護現場での管理者としての経験を活かした職員研修、コーチングを中心に活動。コーチングはITベンチャーなど多岐にわたる業態で展開。国立大学での「AIを活用した介護職員の行動分析」の実験管理も行っており、様々な情報を元にした多角的な支援を行う。
