こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。
今回は、病床数適正化緊急支援事業についてお話しします。
病院や有床診療所の事務長さんにとっては、とても気になる制度だと思います。なぜなら、病床数を削減する医療機関に対して、削減した病床1床につき410万4千円、休床の場合は205万2千円という支援が予定されているからです。
金額だけを見ると、かなり大きいですよね。
ただし、ここで最初にお伝えしたいことがあります。
この制度は、「病床を減らせば自動的にもらえる補助金」ではありません。
対象になる病床かどうか、休床扱いになるのか、過去の調査や届出との整合性はあるのか、地域の医療提供体制に支障がないか。こうした点を、かなり丁寧に確認する必要があります。
まず押さえたいのは、6月23日から申請受付開始予定という点です
厚生労働省のページでは、令和8年6月23日から、指定の申請フォームに申請様式を送信する方式で、医療機関からの申請受付を開始する予定とされています。
ですから、病床削減を検討している医療機関は、まずこの日付を意識しておく必要があります。
ただし、6月23日になったら、すぐにフォームへ入力して終わり、という話ではありません。
申請様式の準備も必要ですし、口座振込申出書も必要になります。さらに、都道府県が確認に必要と判断する書類を求める可能性もあります。
つまり、国の申請フォームに送る前に、自院として整理しておくべきことがいくつもあるということです。
対象になる病床かどうかを確認しましょう
この事業の対象は、一般病床、療養病床、精神病床などを削減する医療機関です。病院だけではなく、有床診療所も対象に含まれます。
ただし、削減する病床がすべて対象になるとは限りません。
たとえば、産科・小児科部門の病床、同一開設者内で融通した病床、事業譲渡等による削減、病床種別の変更などは、原則として算定から除外される場合があります。
また、感染症法に基づく医療措置協定病床との関係も確認が必要です。
ここは、事務長さんが「うちは何床減らす予定だから、単純に410万4千円をかければいい」と考えてしまうと危険です。
まずは、自院が削減しようとしている病床が、制度上の支給対象に入るのかを確認してください。
休床かどうかで支給額が変わります
もう一つ大事なのが、「休床」の扱いです。
削減した病床1床あたり410万4千円という数字が注目されますが、削減する病床が休床の場合は、1床あたり205万2千円です。半額になります。
しかも、休床かどうかは、病院側が自由に判断できるものではありません。
申請時点、すでに削減済みの場合は削減時点で、休棟中の病棟の病床かどうかなどが確認されます。
ここでも、直近の病床機能報告、休床届、入院実績、病棟の運用状況などを整理しておく必要があります。
「この病床は稼働病床なのか、休床なのか」
この整理は、申請前に必ずしておきたいところです。
都道府県ごとに運用が異なる可能性があります
今回、私が特に強調したいのはここです。
この事業は、厚生労働省が制度の枠組みを示していますが、実施主体は都道府県です。実施要綱でも、都道府県が必要と認める書類の提出を求めることができるとされています。
つまり、国のページだけを見て判断してはいけません。
各県によって、問い合わせ先、提出方法、事前の活用意向調査、締切、確認書類、協議の場にかけるかどうかの判断などが異なる可能性があります。
実際に、県によっては、病院・有床診療所と精神科医療機関で問い合わせ先を分けているところもあります。独自に活用意向調査を実施している県もあります。
ですから、病床削減を検討している医療機関は、必ず所在地の都道府県に確認してください。
「厚労省のページではこう書いてあるから大丈夫だろう」ではなく、
「自院の所在地の県では、どういう手続きが必要なのか」
「県として、どの病床削減を対象として認めるのか」
「事前相談や意向調査への回答が必要なのか」
「地域医療構想調整会議などでの議論が必要なのか」
ここを確認することが大切です。
協議の場が必要になる場合もあります
病床を削減する場合、内容によっては、医療法に基づく協議の場等で議論が必要になることがあります。
たとえば、現に患者さんが入院している病床を削減する場合や、100床以上の削減を行う場合などです。
また、都道府県が必要と判断すれば、協議の場での議論が求められることもあります。
この場合、単に「病床を減らします」という説明だけでは足りません。
削減後の患者さんの受け入れ先はどうするのか。在宅医療や外来で代替できるのか。他の医療機関との調整はできているのか。地域の医療提供体制に支障が出ないのか。
こうした説明が必要になります。
病床削減は、病院の経営判断であると同時に、地域医療に関わる判断でもあります。だからこそ、県との事前相談が重要になります。
返還リスクも確認しておきましょう
この事業は、給付を受けた後の確認もあります。
病床削減の状況は、都道府県への届出や許可申請、病床機能報告、医療法25条に基づく検査時の施設表などで確認されることになります。
さらに、申請どおりに病床削減が行われていない場合や、一定期間内に病床を増加させた場合には、給付金の返還が求められる可能性があります。
つまり、「一時的に病床を減らして支援を受ける」という性格の制度ではありません。
将来的に病床を戻す可能性があるのか。地域での役割はどう変わるのか。人員配置や病棟運営をどう見直すのか。
ここまで含めて、病院として判断する必要があります。
事務長さんにまずやってほしいこと
では、病院の事務長さんは、まず何をすればよいのでしょうか。
私は、次の順番で確認することをおすすめします。
まず、自院が削減を検討している病床数と病床種別を整理してください。
次に、その病床が稼働病床なのか、休床なのかを確認してください。
そして、過去に提出した活用意向調査や地域医療構想関係の調査、病床機能報告、都道府県への届出内容と矛盾がないかを確認します。
そのうえで、所在地の都道府県に問い合わせをしてください。
問い合わせるときは、「制度の一般論」ではなく、自院の具体的な状況を整理して相談することが大事です。
たとえば、
「当院は一般病床を何床削減する予定です」
「そのうち何床は現在休床扱いです」
「過去の調査では何床削減予定と回答しています」
「現在入院患者がいる病床を含みます」
「削減後も入院機能は維持します」
このように、県が判断しやすい情報をまとめておくとよいと思います。
まとめ
病床数適正化緊急支援事業は、病床削減を検討している医療機関にとって、大きな支援策です。
一方で、支給額だけを見て判断する制度ではありません。
6月23日から指定フォームで申請受付が始まる予定ですが、実際の手続き、必要書類、事前相談、協議の要否、締切などは、都道府県ごとに異なる可能性があります。
ですから、病院側でまず行うべきことは、厚労省の資料を確認すること。そして、必ず所在地の都道府県に問い合わせることです。
病床削減は、単なる病床数の変更ではありません。
自院の将来の診療体制、職員配置、地域での役割、患者さんの受け入れ体制に関わる重要な判断です。
「申請できるか」だけではなく、「削減後の医療提供体制をどうするか」まで含めて、院内で早めに検討を始めていただきたいと思います。

■病床数適正化緊急支援事業の実施について
