「在宅医療充実体制加算」新設が在宅医療の経営構造を変える
2026年3月5日、厚生労働省より令和8年度診療報酬改定の告示が正式に発出されました。今回の改定で最もインパクトが大きいと注目されていた項目のひとつが、「在宅医療充実体制加算」の新設です。従来の「在宅緩和ケア充実診療所・病院加算」は廃止され、新たな加算に一本化されました。
点数は大幅に引き上げられており、算定できる医療機関にとっては収益構造に直結する改定です。一方で、算定するためのハードルは非常に高く設定されています。
施設基準のポイント——算定できる医療機関はかなり絞られる
告示で明らかになった施設基準を確認すると、要件は多岐にわたります。
人員体制
- 在宅医療を担当する常勤換算医師数が3名以上、かつ常勤医師数が2名以上の配置が必要
- 機能強化型の在支診・在支病であること
- 自院単独で24時間の連絡体制・往診体制を確保していること
この「自院単独で」という点が重要です
実績要件
- 緊急往診が年間30件以上、かつ看取りが年間30件以上(過去1年間)
- 月2回以上の訪問診療患者のうち、重症度の高い患者(別表第8の2)または包括的支援加算対象患者の割合が2割以上
- 医師1人当たりの訪問診療患者数が100人以下
緊急往診・看取りともに30件以上というのは、在支診全体を見渡しても達成している施設は決して多くありません。また「医師1人当たり100人以下」という上限は、患者数を増やして規模を拡大する方向性(いわゆる薄利多売型)とは相容れない要件です。
緩和ケア関連
- 緩和ケア研修を修了した常勤医師の配置
- オピオイド系鎮痛薬の注射実施実績(年2回以上、または過去5回以上の経験)
- 緩和ケア病棟または在宅での看取り実績が10件以上ある保険医療機関での、3か月以上の勤務歴
具体的な経験値が問われる要件であり、単なる研修の受講だけでは不十分です。そのほかにもいくつかあります。
経営的な影響——二極化が加速する可能性
これらの要件を全て満たせる医療機関は、全国の在支診の中でもかなり限られます。結果として、この加算を算定できる医療機関と算定できない医療機関との間で報酬格差が明確に広がる構造です。
事務長として今すぐ確認すべきは、「自院はこの加算を取りにいける体制にあるか否か」という経営判断です。現時点では届かなくても、今後の人員計画・機能方針の整理において、この施設基準を”ひとつの指針”として活用することができます。
国が今回の改定を通じて示したメッセージは明確です。「重症な在宅患者に対し、質の高い診療を行う体制を持つ医療機関を評価する」——この方向性を事務長として経営計画に織り込んでおくことが、今後の競争力につながるでしょう。
