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村上佳子コラム「マイナ保険証の普及が進まない理由と医療の現実 」

医療システムのデジタル化とその課題

医療システムのデジタル化とその課題

マイナ保険証の導入とその影響

最近、医療システムのデジタル化が進んでいますよね。特にマイナ保険証が導入され、これが医療現場でどう使われていくのかが注目されています。しかし、実際にはその普及が思うように進んでいないんです。なぜでしょうか?

電子カルテ導入の期待と懸念

マイナ保険証に関連する電子カルテの導入が進めば、診療情報や保険請求のデータがすべて電子的に管理され、医療の質が向上することが期待されています。その事自体はとても良いことですよね。国際的に見ても、我が国のデータ管理はまだまだ改善の余地がありますから。そうは分かっているのに普及が進まない理由は、患者さん側にあるのではないかと思います。病名や治療内容がデジタルで管理され、広く共有されることに対して、「それって大丈夫なの?」と不安を感じている方が多いのではないでしょうか。

医療機関側の課題:電子カルテ化の負担

一方で、医療機関側にも不安があります。特に電子カルテ化の問題です。地方の小規模な医療機関では、電子カルテの導入やシステムの更新にかかるコストが大きな負担になることもあります。現在の紙ベースのシステムで十分に機能しているのに、なぜ大きな投資をしてまで、わざわざ慣れない方法を取らなければならないのか。そう考えると、どうしても慎重にならざるを得ませんよね。こういったことが積み重なって、マイナ保険証の普及が進みにくい状況になっているんです。

今後の展望:バランスの取れたシステムの構築

今後、医療機関と患者さんが安心して使えるシステムを整えることが本当に大事になってきます。私はデジタル化には基本的に賛成ですが、一方で、長年この業界に身を置く者として、たとえば離島や山間の町で、昼も夜もなく、一生懸命に患者さんに寄り添って診療してきた先生たちにも目を向けてほしいと思います。医療機関を取り巻く環境を、長期的な視点とミクロな視点の両方で見れば、効率化だけでは片付けられない地域や思いがあるのです。国として、デジタル化がもたらす便利さと、人をケアする職業の現実とのバランスを見つめ直す必要があると感じています。

村上佳子氏

村上 佳子 氏

M&Cパートナーコンサルティング代表取締役
メディカル21代表
一般社団法人 医療実務研究会 代表理事
医療法人 南凕会 顧問 社会福祉法人 景福会 評議員
㈱総合メディカル専任講師
公益社団法人 福岡県介護老人保健施設協会理事

病院医事課に12年勤務の後、㈱医療事務サービス入社。教育システム課にて講師及び派遣社員の教育。
現在はメディカル21代表として、総合病院から単科病院・診療所まで幅広くレセプト診断・減点・請求漏れ対策指導に従事する傍ら、一般社団法人医療実務研究会代表理事として各種セミナーを企画し、九州一円の80数会員の勉強会を開催し、医療事務職員のレベルアップ指導を行う。また、医療機関の顧問として医事課をはじめ経営に直結する指導を行っている。
2006年度より公益社団法人福岡県介護老人保健施設協会理事に就任。
2014年6月より公益社団法人全国老人保健施設協会社会保障制度委員会介護報酬部会会員として活動。