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厚生局の指導等及び医療監視への対応策「保険医・保険医療機関の責務」

保険医・保険医療機関の責務

「保険医療機関において診療に従事する保険医は、厚生労働省令の定めるところにより、健康保険の診療に当たらなければならない。」(健康保険法第72条)と定められています。この厚生労働省令とは、「保険医療機関及び保険医療養担当規則」(療養担当規則)のことを指しており、保険診療を行なうに当たって、保険医療機関と保険医が遵守すべき基本的事項を定めたものとなっています。その他、保険診療の前提として医師法・医療法・薬事法等を遵守すべきことは言うまでもありません。

厚生局の指導等に限らず、診療報酬明細書(レセプト)が査定される理由としては、この医師法や療養担当規則等が基になっています。したがって、医事職員に限らず、診療現場の医師やコメディカル等もこれらの内容を理解・把握しておくことが適正な診療報酬請求の上でとても重要となります。

医師法

診療に応ずる義務等(第19条)

診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会った医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書の交付の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。※正当な事由とは、医師の不在、又は病気等により事実上診療が不可能な場合。

ただし、単に軽度の疲労や、医療費の未払い、診察時間を制限している場合、天候不良等(事実上往診不可の場合を除く)の理由にて、診療を拒むことはできない。(厚生省医務局長通知 昭和24年9月10日 医発第752号)

また、医師の専門外の治療であることを患者に説明した場合であってもなお、患者が了承せず診療を求める場合は、応急の措置などできる限りのことをしなければならないことが定められています。したがって、当該地域の患者の信頼と安心という面でも、診療時間以外の来院や専門外の治療の場合においては、当院以外で対応できる医療機関を案内できるよう事前の準備や対応が求められます。

無診察治療等の禁止(第20条)

医師は、自ら診察をしないで治療をし、診断書・処方箋を交付してはならない。また、自ら出産に立ち会わないで出生証明書・死産証書を交付してはならない。自ら検案しないで検案書を交付してはならない。ただし、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合の死亡診断書についてはこの限りではない。

無診察治療の例

  • 定期的に通院する慢性疾患の患者に対し診察を行なわず処方箋のみ交付。
  • 診察なしで消炎鎮痛処置のみ行なっている患者等があげられます。

なお、厚生局等の指導において、医師が診療を行なったという確認は診療録で確認されます。診療録に診察に関する記載が全くない、または「薬のみ」「前回do処方」等の記載しかないと無診察治療が疑われることになります。また、以前の改定で「外来リハビリテーション診療料」が新設され、7日に1回、若しくは14日に1回の診察が行なわれれば、その間に行なわれるリハビリテーションは、医師の診察なし(再診料の算定なし)でも可能とのルールとなり、各医療機関及び患者ごとに外来リハビリテーションをどういう方法で行うかを選択できることになりました。そこで、以前のように「診察+リハビリテーション」という流れで行なう場合は、もちろん再診料も算定することとなるので、以前よりも医師が診察したという証拠(診療録への記載)が、しっかり確認されることになります。

診療録の記載及び保存(第24条)

医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。また、医療訴訟が起こった場合、看護記録と医師記録の記載内容の矛盾点がないかどうか、整合性があるかどうかをチェックされます。その他、指示伝票や熱計表を確認されることもあります。そこで注意しておくべき点は、記載年月日及び記載時間です。医師と看護師の記載内容と記載日及び記載時間に矛盾がないかどうか、互いの記録も確認の上でそれぞれが診療録を記載していくことが重要です。

さらに、多くの医療機関で見受けられるケースがそれぞれの職種の記載内容、検査結果がどこに挟まっているのかがとても分かりづらくなっている診療録ファイルです。自身の記録する時間よりもむしろ必要なデータや記録が記載されている箇所を探し出すことに時間を要します。診療録は医療機関のものではなく患者のものでもあります。分かりづらいカルテの場合、夜間に非常勤医師が緊急時などで診療を行う際の障害ともなるため、分かりやすい文字は勿論のことインデックスを用いて医師、看護、検査(結果)、リハビリ、MSW(相談記録)など職種別に分けるなどの工夫も必要です。もし、厚生局等の指導が入った場合も分かりやすくカルテがまとめられているだけでも印象が良いものです。診療情報管理委員会などを通じて、定期的にカルテのまとめ方を検討されてはいかがでしょうか。

 

能見 将志(のうみ まさし)

診療情報管理士。中小規模の病院に18年間勤務(最終経歴は医事課長)。 診療報酬改定、病棟再編等を担当。診療情報管理室の立ち上げからデータ提出加算の指導まで行う。